自分の値段を決める / サラリーマンから独立して初めて分かったこと

自分の値段を決める / サラリーマンから独立して初めて分かったこと

2022年4月2日

「それで、今回の仕事の料金はいくら?」

サラリーマンから独立してから、最も困った質問だ。会社員なら張り切って働こうがサボろうが、毎月ほぼ同額の給与が出る。昇給のペースは緩やかだから、自分の労働が報酬と直接的に結び付いていると意識する機会は少ない。

少し前までの自身も該当するが、会社に行くこと自体を仕事と捉えている人が少なくないと思う。独立して分かったのは、これまで悪い意味で「雇われ意識」を持っていたこと。自身の価値の大小に向き合わず、一つ一つの仕事への評価が曖昧なところに甘えていた。

さて、ルーティン的な仕事の料金は、時間単価で計算しやすい。例えば、会社員時代に勤務1日で2万円もらっていたら、時給は2,000円ちょっと。だから「2時間かかる作業なら5,000円」などと決められる。

一方、頭をひねらなければいけない、格好つけて言うと、ややクリエイティブな要素を含むと、値付けは難しい。特に新聞社の報道部門は良くも悪くも銭勘定と無縁で、コスト意識は薄い。もちろん、自分の仕事の成果を金銭に換算する感覚などなかった。

時間単価やコストで料金を設定しない

冒頭の質問を投げ掛けられて窮した筆者が「新聞社では1日当たり…」とつぶやくと、業を煮やした目の前の経営者が言った。

純粋に、自分の仕事に幾らの価値があるかを提示すればいい。発注者はそれに納得できたら払い、その分たくさん稼ぐだけ

会社勤めの場合、給与と引き換えに、自分の時間を会社に切り売りするようなものだ。実際、残業すれば「時間当たり幾ら」の手当がもらえる。

しかし「1件当たり幾ら」の世界では、報酬は時間単価やコストを離れ、仕事の価値に対して支払われる。思えば、絵の値段は画材の購入費用を基に決まらないし、スポーツ選手の年棒は練習時間に比例して決まらない。

こうした環境の違いを認識し、あたらめて悩む。「で、幾らにすればいいんだ…」と。

それはともかく、大事なのは会社勤めでも自分の価値を意識しておくことだ。会社組織は個人のパフォーマンスへの還元率が悪い。売り上げ10億円の案件をとってきても、せいぜい金一封を渡される程度だ。

それでも、自分の価値を上げれば対価は徐々に増えるし、より多く会社の資産を活用できるポジションに就ける可能性もある。会社員の醍醐味は、1人では到底できない規模のビジネスに携われること。そういう意味で、会社員も組織人としての自らのバリューを意識して働く重要性があるのだと思う。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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