ここのところの原材料高、資源高、物流費高を受け、北陸の製造業者が続々と値上げに踏み切っている。対象分野は建材など大型の製品から食品まで幅広い。
世界的なインフレに収束の兆しがない中、日本企業はなかなか給与が上がらず。極端に言えば、日本に生きているだけで貧乏になる、という状況が続いている。
「企業努力の限界」
床材や壁材などを製造する大建工業(本店・南砺市)は4月21日出荷分から、カタログ掲載製品のメーカー希望小売価格を引き上げる。
値上げ幅は10%前後。建築音響製品は最大で15%、床材や室内ドア、収納などは12%の値上げとする。
同社は価格改定を告知する案内文で、原材料価格やエネルギー費、海運コストが急上昇する中、生産性の向上や合理化、経費削減などに努めたとして「しかしながら、原材料等の各種コストは依然として上昇を続けており、もはや企業努力だけでは現状価格での製品供給が困難な状況」と説明した。
インテリア、秋に続いて再び価格改定
壁紙やカーテンを製造するシンコール(金沢市)は4月1日に商品価格を値上げする。
同社は原材料価格や梱包資材費、物流運送費の高騰を理由に、2021年9月に値上げしていたが、ここに来てなお高止まりするコストを前に、再びの値上げを実施することにした。
トラックのボディーを作るトランテックス(白山市)は3月から、全製品を平均で10%ほど値上げした。
主要資材である鉄やアルミ、ステンレス、木材などの価格が高騰して「従来価格での安定供給」は困難になっているという。
変わったところでは、バイオテクノロジー企業のニッポンジーン(富山市)も、コスト増を背景に、動物用体外診断用医薬品「エライザキット」の価格改定に踏み切る。
「牛伝染性リンパ腫エライザキット」は4月1日受注分から、「牛ブルセラエライザキット」は5月の出荷予定分から価格を引き上げる。
スギヨも5~15%引き上げ
練り物食品を作るスギヨ(七尾市)は3月1日納品分から、商品の価格改定を進めている。
同社の発表によると、中長期的には世界的な食糧需要の増加から魚肉練り製品の主原料である「すり身」の価格が高まっている。
そこに、短期的には大豆や食用油などの副原料、包材資材費、ガスなどの高騰が重なって製造コストが上昇し、値上げに至ったという。
食品業界では、世界有数の穀倉地帯であるロシアとウクライナの戦争を受け、足元で小麦の価格が高騰している。そうなると、例えば小麦を使った麺を提供する「8番らーめん」のハチバン(金沢市)、「すしべん」の八幡(羽咋市)あたりも、現在の価格の維持が難しくなる局面が来るかも知れない。
預金も「ギャンブル」?
通貨の価値も物の価値も不変ではなく、上下に動くのは当然だ。消費者側から見た問題は、仮に物価が上がっても、それに連動して収入が増えず、相対的に貧しくなることである。
とは言え、固定給・年功給の色彩が強い日本の会社員の給与体系では、むしろアップサイドリスクもダウンサイドリスクも限られていることこそ、最大の特長と割り切るべきか。
そうであれば「副業で稼ぐ」とか「投資で増やす」とかいった自助努力により、物価変動に対応していくしかない。
すると「投資なんてギャンブルみたいなことできない」と言う人が必ずいる。
でも、考えてほしい。年0.001%の預金金利に対し、物価は上記のように数%単位で上がる。数円の利息をもらっている間に、出費が数千円増えてしまう。
筆者は預金を「預金金利以上のインフレは起こらない」という方向に賭けるギャンブルのようなものだと思う(もちろん、一定の元本保証があるので、本当の意味でギャンブルではない)。どうせ多かれ少なかれリスクがあるのなら、一部でも投資に回してみて良いのではないだろうか。