ユニクロでは毎日のように棚を入れ替える/学生バイトの思い出㊤

2021年8月22日

今や国内より海外での売り上げの方が多いというユニクロ。店内はベーシックなアイテムが多いだけに、来店客を飽きさせないための工夫を多く実行し、よくパターン化されたオペレーションを実行している。もう10年ほど前になるが、学生アルバイト時の記憶を基に、その一端を紹介する。

出勤は、なんと午前7時台!

大学生活最後の半年間、アルバイトしていたのは金沢市の「ユニクロアピタタウン金沢ベイ店」。当時(10年前)は北陸で最も大きな店で、地域唯一の「大型店」という区分けになっていた。同時に、デザイナーのジル・サンダーとのコラボ商品「+J」を扱っている唯一の店でもあった。

(出典・ユニクロ公式ホームページ)

最初に驚いたのは出勤時刻の早さだった。

確か午前10時の開店時刻に対し、午前7時45分に出勤していたはず。半年間限定のバイトだったので、条件面をよく確認せずに応募したのだが、まさか通勤ラッシュより早い時間に店に入る羽目になるとは思わなかった。

そんな早い時刻に出勤したスタッフの主な仕事が①清掃②棚の入れ替え、だった。

①について、アパレル店の営業時間中は「きれいに畳んである服を広げる来店客」と「ぐしゃぐしゃの服を畳み直す店員」のイタチごっこになる。そのため、店のそこら中にホコリが溜まる(店内は予想以上にホコリっぽかったので、乾燥する冬場は休憩中にノド飴をを舐めていた)。床にはハイヒールのヒール部分(?)がこすれて出来る、黒い跡が無数に形成される。片っ端から「激落ち君」で消す。

ユニクロは毎週金曜に期間限定価格の対象商品を変更する。「今週はAという商品が2割引だが、来週はAが定価に戻ってBが2割引になる」という具合だ。

だから金曜の朝にPOPを付け替えるのは当然なのだが、それ以外に頻繁に棚の入れ替えを行う。「準社員」というバイトと正社員の中間のような立場の先輩の指示に基づき、毎日のように商品の場所を変更していた。

例えば秋冬なら新商品や売れ筋商品はカーディガンやフリース、ダウン、コートなどになる。入口近くには、そういった期間限定価格の商品や売れ筋商品を敢えて混ぜながら陳列した。ハンガーに掛けたり、畳んで積み上げたり、とにかく細かく指示を受け、開店までひたすら作業を進めた。

狙いは「新鮮味」の演出だろう。まさかユニクロに毎日足を運ぶ人はいないだろうが、何かの拍子に立て続けに来店しても、前回と違う店内を印象付ける。ベーシックで万人に合うアイテムを扱っているからこそ「ああ、いつものアレか」「いつ来ても代り映えしない」と失望されやすいのを、陳列方法を変えて見た目に変化を付けることで防ごうとしているようのではないか。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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店舗の奥まで誘導するためか、期間限定価格の商品は店舗前面だけでなく、店舗奥にも配置していた。コロナ禍では大声を出していないかもしれないが、当時の営業中は入口近くを受け持つスタッフが「店舗後方では〇〇が期間限定価格△△円です。どうぞ、ご覧ください」といった呼び掛けをしていた。

スタッフも陳列場所を覚えられない?

毎日のように棚を入れ替えるデメリットとしては、スタッフですら陳列場所を覚えられないことにあった。

筆者が不真面目だったのかも知れないし、全ての棚を入れ替えるわけではないのだが、配置を変える商品というのは、どちらかと言うと売れ筋に当たる商品。必然的に来店客から問い合わせを受ける頻度が高い商品ということになり、聞かれた際に「あれ?昨日まではあそこにあったけど…」となることがあった。

確かに、頻繁に書店に足を運筆者は、前回に訪れた際と同じ商品が同じ配置で並んでいると、がっかりする面はある。ただ、あまりにしょっちゅう配置を変えると、スタッフも来店客も覚えにくい点はデメリットにもなりかねない。この塩梅はユニクロに限らず全ての小売店の課題である。

後日にアップする㊦では、スタッフのオペレーションの工夫について感じたことを書く予定。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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