大和ハウス工業グループが金沢駅前の金沢市堀川新町で経営する「ダイワロイネットホテル金沢」が、2023年3月31日に営業を終えることになった。同グループは金沢駅周辺で展開している3館を2館に減らし、各種のリソースを集約する。
※続報は以下のリンクから
開業は2006年4月
ダイワロイネットホテル金沢がオープンしたのは2006年4月。それなので、同ホテルは開業から丸17年で閉まることになるわけだ。
ホテルは全208室(定員381人)で、金沢駅兼六園口(東口)から徒歩3分、金沢フォーラスの裏手に位置する。駐車場は立体が32台、平面が12台で、1階には居酒屋の「庄や」が入っている。
閉館の背景は……
それにしても、2020年初頭からの新型コロナウイルス禍で大きなダメージを受けた宿泊業界は、ようやく正常化の兆しが見え始めているのが現在である。外部環境が持ち直している最中に、なぜ営業を終えるのだろうか。
運営会社ダイワロイネットホテルズ(東京)の広報担当者によると、閉館の理由は主に3つある。それが以下の通りだ。
① 設備の老朽化
② 近くに複数のグループホテル
③ リソースの集約
「たかだか開業から17年のホテルが『老朽化』なら、うちのホテルはどうなるんだ!」という同業者の嘆き節が聞こえてきそうだが、これは②とセットで考えると理解しやすい。
下の地図で青いピンがある場所が閉館するダイワロイネットホテル金沢。一方、2つの赤いピンのうち、北側がダイワロイネットホテル金沢MIYABI、南側がダイワロイネットホテル金沢駅西口で、いずれも大和ハウス工業のグループホテルとなる。
赤いピンの2ホテルは、いずれも北陸新幹線開業後に造られたホテルで、内外装とも新しい。「この2ホテルと比べると、築17年のダイワロイネットホテルは老朽化している」ということのようだ。
そうだとしても、コロナ禍からようやく市況が回復しかけている中で、なぜ閉館する必要があるのか。今からが稼ぎ時ではないのか?その答えが③である。
冬は終われど、春が来ない?
ダイワロイネットホテルズの広報担当者が「…とまあ、経営資源を集約するわけです。」と一般論的に説明したことを見逃す筆者ではない。
1年近く前、下記リンクの記事で書いた通り、このコロナ禍で稼働率が急低下した宿泊業からは、多くの人材が流出した。そうした人材は、宿泊業を巡る状況が改善し始めても、なかなか戻ってこない。トンネルの手前も奥も雪国という感じか。
状況は現在も変わらないばかりか、最近は清掃業者やリネン業者といった周辺産業の人手不足も深刻化している。宿泊施設によっては、これまで外注していたサービスが十分に受けられなくなり、内部の従業員が一部業務を担当せざるを得ない事態になっているとも聞く。
今回、ダイワロイネットホテルズが3館を2館に減らすのも、こうして人手不足感が根強い中、余裕をもってホテルを営業していくために体制を整える狙いがある。そういう意味で「経営資源」のうち、ヒトに関する集約という意味合いが強いと言えそうだ。
営業終了後は……
さて、築17年ということは、まだまだ宿泊施設として活用できそうな新しさである。
閉館後の方針を聞いたところ「未定です」とのことだった。
金沢市内は「北陸新幹線開業~コロナ禍」の数年間、ホテル開業ラッシュだったため、市況が少し回復したぐらいで、中古ホテルの買い手を公募してすぐに見つかるとは考えにくい。正確には「腹案はあるけど今は明かせない」というところではないかと推察している。