「西金沢駅前→金沢駅前」へ移ったZepp建設騒動について、西金沢の住民&元担当記者として思うこと

「西金沢駅前→金沢駅前」へ移ったZepp建設騒動について、西金沢の住民&元担当記者として思うこと

2025年5月8日、地元マスコミ各社により、西金沢駅前が候補地だったライブホール「Zepp」の建設計画が一転して金沢駅前(駅西)を舞台に進むことになったと報じられた

はからずも私は2023年に金沢駅前を候補地として考え直してはどうかと書いていた(下記ご参照)ので、もちろん今回の計画変更は旧計画と比べると良案だと思う。

ただ、報道で計画変更の背景として言われた「西金沢の住民による治安悪化を懸念した反対運動があった」は言葉足らずの感があるため、西金沢の予定地周辺の住民であり、旧計画の浮上当時に地元新聞の担当記者でもあった身として、いくつか書きたい。

住民による「心配運動」

まず、住民は単に感情に任せた反対運動をしていただけではない。施設や計画の持続性を「心配」していた。

当時の西松建設側の説明によると、西金沢での計画は以下の特徴があった。

・ターミナル駅(金沢駅)から1駅という立地の良さが魅力

・年間200~250日稼働の見込み

・電車での来場者が多いはず。車の送迎も半分は西金沢駅の反対側で乗り降りするだろうから混雑はしない

・イベント開催時は来場者が近隣住宅街に流れないよう警備員を立たせる

・運営は「Zepp」を想定している

この計画に対し、地元説明会で住民側からは治安悪化や渋滞を懸念する声があっただけでなく、そこに住む者の視点から計画にさまざまな疑問が呈された。

たとえば「ターミナル駅から1駅」といっても、ほぼ全ての都市機能をターミナル駅が担う地方都市は、大都市と大きく事情が異なる。

「新宿駅の隣の代々木駅」「渋谷駅の隣の原宿駅」と「金沢駅の隣の西金沢駅」は全く違う。実際、西金沢駅や東金沢駅はいくつかの商店や事業所がある以外、大部分は住宅であり、その多くは一軒家である。

極論すると、金沢駅周辺以外は全て「郊外」みたいなもの。そこにライブホールを建てて「年間200~250日稼働」「多くは電車移動」は、素人目にも無理筋に見えた。

西金沢駅前の「Zepp建設予定地」(2025年5月8日撮影)

ライブホールのように特殊な建物は転用が難しい。仮に集客がうまくいかず数年で撤退したら、残されるのは使い道のない大きな廃墟である。予定地はもともとスーパーマーケットの進出計画が頓挫した場所。10年越しにようやくできた建物が数年で廃墟になるのは避けたい。住民はそう懸念していた。

だが、当時、私の周囲では「周辺住民以外は反対じゃない」「つまりサイレントマジョリティーか」という的外れなやりとりが聞かれた。いや、範囲を広げれば広げるほど「賛成」というか「作るなら作れば?」という無責任な声が大部分になるのは当たり前でしょうよ。

そもそも本当に「Zepp」になる?

振り返ると、こうした「反対運動&心配運動」の背景として、住民側には西松建設への不信感が根強くあったように思う。

西金沢での建設計画が明らかになったのは日本経済新聞の記事が発端で、事前に地元への説明はなかった。西松建設側によると「想定外に早く話が漏れたため」らしい。

それを信じるとしても、運営業者として名前が挙がったZepp側との温度差が不可解だった。細部まで覚えていないが、金沢進出についてZepp責任者は「Zeppとして『やる』とは表明していない」と保険をかけたニュアンスの発言をした。

報道は便宜上「西金沢のZepp進出問題」として報じてきたが、実はZepp側が表立って「西金沢駅前に進出します!」とは言っていない。私は「そもそも足並みがそろってないんじゃ?」「建物だけできて運営業者がいない可能性も?」と計画に危うさを感じていた。

「Zepp計画」の浮上後、予定地の隣に分譲マンション、その隣に賃貸マンションが建った。そのうちにコロナ禍でライブ活動への逆風が強まった。そのうちに予定地の隣には事業所が2つでき、もはや誰の目にもホール建設適地ではなくなった。

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で、建設予定地を金沢駅前に変更したという。それならば西金沢の住民に「お騒がせしました」の一言ぐらいあっても良いと思うが、もういいか。

次はマンションですかね

さて、ライブホール建設計画が白紙になった土地を、どう活用するのか。前述の通り、周辺は一軒家が大半で、あとはマンションや事業所。順当に考えれば分譲マンションだろうと予想しておきたい。

以上、長い駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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