北陸電力(富山市)が発表した2021年9月中間期の連結決算は、各利益が前年同期から6割前後の減少となった。これに伴って通期業績予想を下方修正し、前期実績に近い水準を見込んでいた各利益を、5割前後の減益となる予想に大きく引き下げた。
営業収益 | 経常利益 | 純利益 | |
中間期 | 271,636(▲11.7%) | 9,177(▲63.5%) | 5,608(▲67.4%) |
通期 | 580,000(▲9.3%) | 5,000(▲59.5%) | 3,000(▲56.1%) |
減益の最大の要因は燃料費の高騰
利益をこれほどまでに押し下げた最大の要因が燃料の高騰だ。
原油価格の高騰に伴うガソリン価格の値上がりが取りざたされているが、火力発電の燃料となる石炭や石油、LNG(液化天然ガス)も高騰している。北電の資料によると、石炭価格は昨年の夏ごろを底に、現在はその2倍の水準だ。
火力燃料には「燃料費調整制度」があり、きょう仕入れた燃料費は3カ月ほど先の電気料金に反映される。
例えば、80円で仕入れて110円で売っていたのに、仕入れ値が100円に上がってしまっても、売価を130円に上げられるのは3カ月後であり、今は100円で仕入れて泣く泣く110円で売るしかないということ。
こうして北電が中間決算の経常利益で、燃料高騰によって負ったマイナス影響額は「約160億円」に上った。
前年同期の経常利益は251億円で、この中間期の経常利益は91億円。つまり、燃料価格が高騰しなければ、前年同期並みの利益水準だったのだ。
同社は燃料費について、今後の想定レートを厳しめに見直し、その影響で、通期予想を下方修正した。ちなみに、通期では燃料費高騰が経常利益を190億円ほど押し下げるという。
この先の燃料代がどう推移するかは読みにくいが、上記の仕組みは、燃料代の下落局面では利益を押し上げる方向に働く。そのタイミングがいつか、という見極めが投資判断の上では大切かもしれない。
原発再稼働の関電は利益率高く
28日は北陸電力以外に、北海道、東北、中部、関西の4電力会社が中間決算を発表した。北陸電力の決算だけを見ていると、電力会社がすべからく大変なのかと想像できるが、本当にそうか。
試しに、この中間期の営業利益率を比べてみよう。
1 北海道電力 9・9%
2 関西電力 8・8%
3 東北電力 5・6%
4 中部電力 4・6%
5 北陸電力 4・2%
こうやって見ると、各社、随分と状況が異なるのが分かる。関西電力の健闘は、背景に低コストの原子力発電所の再稼働状況が影響しているように思える。
北陸電力の志賀原子力発電所2基は停止中で、再稼働時期にめどはたっていない。一方、関西電力は11基のうち4基が運転中、3基が停止中、4基が廃止措置中となっている。
今年度上期を前年同期と比べると、全国で経済活動が徐々に再開され、電力需要が高まった。この場面で原発を稼働させられた関電がコスト面で優位に立つのはある意味、当然で、だからこそ逆に志賀原発を稼働できていない北陸電力の苦悩ぶりを垣間見る結果となった。