500ページ近い大作だけど、マンガだからスラスラ読める。なるべく平易に書かれ、難しい専門用語が説明なしにいきなり出てくることはないので、初心者はとりあえずコレを読めばOKという感じ。
「経営戦略」と聞くと、自分には縁遠いと感じる人もいるだろうが、会社を自分個人に置き換えて読むと、自らが組織、業界、社会の中でどう振る舞うのが効果的なのかを考えるヒントになる良書だと思う。
簡単な流れを紹介/経営戦略論の興り
本書で紹介されるものを簡単に説明する。
まず、マネジメントという概念が生まれる以前の時代から話は始まる。先人たちはいかに生産現場の効率を向上させ、労働者はどのような動機付けで働くと満足感を得られるのか、といった研究を始めた。
この段階では、どちらかと言うと、研究の対象は現場であり、目指すはその最適化という感じだろうか。
経営戦略に関する大きな転機は世界恐慌(1929年)だった。自社ではどうしようもない状況を前にして、企業経営者たちは自分たちを取り巻く外部環境によって大きな影響を受けることを実感。どうすれば生き残れるかを考え始めたところに、経営戦略が広がる素地が生まれた。
ポジショニング派VSケイパビリティ派
経営戦略論としてまず頭角を現したのが、外部環境(業界構造や競合の状況など)を分析し、自分が勝てる立ち位置を探そうという「ポジショニング派」だった。あくまで位置取りが先にあり、それに合わせて組織や人を強化すべきと主張した。
ところが、そうやって「競争優位性」というものを気付いたはずの企業が、だんだんうまくいかなくなってきた。そこで、社内の能力に焦点を当てたのが「ケイパビリティ派」だった。
ただ、そのケイパビリティ派に基づくような経営をする企業では、効率化・多品種化を進める中で、やがて確かに効率は良いものの収益が上がりにくい、という状況に陥る。
どっちの考え方も、なかなかうまく運ばない。ここまでが2000年ごろまでの話。
あれこれ良いとこどりがベスト
両派とも持論を譲らず、でも、どちらも現実に沿わない。そこで、それぞれの良いところどりというか、両派の要素を組み合わせて整理し直す「コンフィギュレーション」という考え方が出てくる。
内部環境が優先される場合もあれば、外部環境が優先される場合もある。どちらかではなくて、どっちも上手に組み合わせようよ、という具合だ。
そして現代では、技術の進化スピードが速まる中でイノベーションの仕組みに注目したり、高速で試行錯誤を繰り返して正解を探ったりする経営戦略が盛んに論じられるようになった。さあ、これからはどんな戦略が有効になるのか?
という感じが概略。どうでしょう?定価は1,900円(税別)。充実した分量の割には安く、自己投資としては有用な出費だと思う。
本書で紹介される理論のうち、もしも自身の考え方や置かれた状況にフィットするものがあれば、その学者や作家の著作を実際に読み、さらに理解を深める。そんな「学び」の第一歩として、本書を強くオススメする。