スペースバリューホールディングス(日成ビルド工業)をファンドが買収し、非上場化へ

スペースバリューホールディングス(日成ビルド工業)をファンドが買収し、非上場化へ

2021年11月13日

プレハブ建築や駐車場経営の日成ビルド工業(金沢市)の持ち株会社スペースバリューホールディングス(HD)は2021年11月12日、事業再生を手掛けるポラリス・キャピタル・グループ(東京)の傘下に入り、非上場企業となる方針を示した。

ポラリスの完全子会社に当たり、スペースバリュー買収のために設立された特別目的会社(SPC)がTOB(株式公開買付)を実施し、流通している普通株式は1株につき1150円で買い取る(12日終値は965円)。

この取引に関し、スペースバリュー側は賛同する旨を公表している。

現在、スペースバリューの筆頭株主はシンガポール投資ファンドのアスリード・キャピタルで、24%余りを保有する。このアスリードもTOBに賛同している

SPCはアスリードの持ち分はもちろん、流通する普通株式、今回発行する新株予約権を取得し、スペースバリューを子会社化する。買い付け期間は11月15日~12月27日。買付予定数の下限は所有割合66・6%に当たる2373万1300株となる。

日成ビルドは設立70年、上場43年の名門企業

スペースバリューの完全子会社で中核事業会社の日成ビルドは1961年設立で、78年に大証2部に上場した。96年には東証1部に上場し、2018年に持ち株会社制に移行してスペースバリューが上場企業となった。

現在は連結子会社11社、非連結子会社1社、持分法適用関連会社1社、持分法非適用関連会社1社からなる企業集団。

同社公表資料によると、今年(2021)2月以降、企業価値を向上させる方法として、独力での経営改善に加え、他社との戦略的パートナーシップを模索し始めた。

今年3月、アスリードが自社に独占交渉権を付与したMBO(マネジメントバイアウト)を実施するよう求めた。しかし、スペースバリューは2019年に発生した不適切会計などの問題に対処していたため提案を検討できないと返答し、アスリードも諦めると通知したらしい。

その後も両社は対話を続けた。アスリードは今年6月の株主総会を前に、前述の不適切会計問題後も経営管理体制の改善ぶりが甘いと指摘していた。資料を読む限り、両社は敵対的な関係にあった印象を受ける。

ポラリスは4月から調査開始

一方のポラリスは今年4月から投資先候補としてスペースバリューを調査し、不祥事後に業績が足踏みしているが、将来的に再成長が可能と見込んだらしい。

そして7月以降、スペースバリューの経営陣と面談し、自社の傘下に収めて非上場化し、安定して機動的な経営にすべきとの結論に至ったという。

9月10日には今回のTOBを提案し、その後、スペースバリュー側が前向きな意思を伝えた。

ポラリスは10月中旬、アスリードに対し、自分たちの提案に乗るよう打診した。スペースバリュー経営陣も、ポラリスの提案に賛同するようアスリードに求めた。その後、株の買い取り価格に関してポラリスとアスリードが協議を重ね、結局、11月12日付で1株1150円にすることで決着したらしい。

今後は海外でも受注拡大の方針

ポラリスは今後、国内で伸び悩んでいる地域に重点的に営業マンを配置してシェアを拡大するほか、立体駐車場事業では海外でビジネスを拡大する方針。また、グループ各社で重複する業務を統合するなどして経営の効率化を進める。

公表資料にはかなりの分量を割いて現状の課題、今後の事業展開が紹介されている。ここ数年は不祥事対応に力を注いでいたスペースバリューのビジネスを、ポラリスは本気で大きく前進させたいつもりのようだ。

今後、上場企業でなくなれば、企業の成長をつぶさに見ることは難しくなるが、地元住民としては陰ながら応援したい。

 

余談だが、昨年のコロナショック後、スペースバリューの株式を保有していた時期がある。なかなか値上がりしないので、しばらくして売ってしまったが、あのまま持ち続けていれば、今ごろは……。タラレバが止まらない。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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