伊藤忠商事、大建工業(本店・南砺市)を買収へ/23年10月までTOB実施、完全子会社化目指し、大建を上場廃止へ

伊藤忠商事、大建工業(本店・南砺市)を買収へ/23年10月までTOB実施、完全子会社化目指し、大建を上場廃止へ

2023年8月10日

伊藤忠商事は建材製造の大建工業(本店・南砺市)を買収する。2023年10月まで株式の公開買い付けを実施し、完全子会社化を目指す。大建工業は東証プライムに上場しており、TOBが成立した後は上場廃止を予定している。

伊藤忠商事は現状(2023年3月31日)、大建工業の筆頭株主に当たり、持ち株比率は36.3%となっている。大建工業はTOBに賛同し、既存株主に応募を推奨している。

1株3,000円で買付、買収額は最大497億円

伊藤忠商事は100%出資するBPインベストメント(東京)を通じ、2023年8月14日~10月10日(40営業日)の期間で株式を買い集める。買い付け価格は1株3,000円で、8月10日の終値2,330円より28.7%上乗せした金額に設定した。

この買い付け価格を巡っては、伊藤忠商事と大建工業との間で何度も折衝があったらしい。発表資料によると、当初は伊藤忠商事が3,000円よりも安い金額を提示したが、大建工業は増額を希望し、最終的に6回目(2023年7月24日)の提案で買い付け価格が決まった。

買い付け数の下限は所有割合で31.83%に当たる829万8,295株と設定した。これは大建工業の発行済み株式総数から大建工業が持つ自己株式、伊藤忠商事の保有分を引いた株式数の過半数に当たる。

下限を超える応募があった場合、伊藤忠商事が全てを買い取るため、上限は設けていない。買収額は最大で497億円となる。

今回の買収の背景について、伊藤忠商事によると、大建工業はメイン事業領域である住宅業界で国内市場が縮小する一方、北米で利上げによる市況冷え込みが予想され、新たな市場の開拓が必要となっている。

そんな環境下で、大建工業は非上場化して伊藤忠商事と制限なく協業を加速するのがベストの選択肢だと判断したそうだ。

大建工業は1945年に発足

大建工業の起源は1945年で、大建産業(株)林業部の全事業を継承し、大建木材工業(株)として発足した。もともとは南砺市が発祥なのだが、1947年には大阪支店を開設し、本社業務の大半を大阪に移転した。

1949年には大阪証券取引所に上場し、1971年には東京証券取引所第1部に上場した。

現在は東証プライムに籍を置いている。「DAIKEN」のブランド名で、床材や天井材、収納など幅広い建材を扱っている。2023年3月期の連結売上高は2,288億円、純利益は103億円だった。従業員数は3,564人(2023年3月31日時点)。

伊藤忠、大建の資本関係は1953年から

伊藤忠商事と大建工業の資本的な結びつきは古い。

伊藤忠商事は1953年に大建工業の株主から当時の大建工業が発行していた株式の8.3%を取得した。これが資本関係のはじまり。

それ以降、伊藤忠商事は段階的に大建工業の株式を取得したほか、複数の会社を共同で設立して事業上の関係も深めてきた。そして、前述の通り、現在は伊藤忠商事の持ち株比率が3分の1を超えている。

また、伊藤忠商事から見た大建工業は関連会社に当たり、取締役1人を派遣する関係となっている。


筆者は大建工業株が配当利回り4%を超えていた頃、それなりの株数を保有していたのだが、株価の上昇を受け、だいぶ前に売却してしまった。いま持っていれば、数日で数十万円の利益が見込めたのに、惜しいことをしたなあ…。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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