2021年11月25日の北國新聞朝刊1面によると、石川県は来年にも、県内初の「水素ステーション」を開設する方針を固めた。
水素ステーションはトヨタなどが販売する「燃料電池車(FCV、トヨタのミライなど)」に燃料となる水素を供給する施設。記事によると、金沢と能登に1カ所ずつ設けるらしい。
なかなか先進的なニュースのようだが、実は石川県内の水素ステーションに関する取り組みは、全国的に見てかなり遅れている。
燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)によると、本州で稼働中のステーションも具体的な計画もないのは、東北4県と山陰2県、そして石川県のみ。四国、九州を含めると36都府県で整備されており、11県で整備が済んでいる(進んでいる)。
当然、富山、福井にもある。富山の「水素ステーションとやま」は昨年3月、日本水素ステーションネットワーク(東京)と富山水素エネルギー促進協議会が北陸初のステーションとしてオープンさせた。福井の「イワタニ水素ステーション福井灯明寺」は今年4月、日本水素ステーションネットワークとガス大手の岩谷産業(大阪市)が開設した。
他の全国のステーションを見ても、事業者はガス各社や日本水素ステーションネットワーク、ENEOSなどとなっている。
石川県が事業者? なぜ、動きが鈍かった?
北國新聞では「石川県が新設する」とあるが、本当だろうか?
FCCVのホームページで見ると、室蘭市が事業者になっている例はあるが、他に自治体の名前は見当たらない。県が事業者として取り組むのだとしたら、全国初の事例かもしれない。
そもそも、なぜ石川県で取り組みが遅れていたのだろう?なぜ県が設置するのだろう?
ここからは素人の推測として聞いていただきたい。
北陸で先行した富山県はFCVを推進するトヨタ系ディーラーが5チャネルもあった。もっとも、3チャネル(今は1チャネルに統合されている)は同じ品川グループで、トヨタ系ディーラー内のパワーバランスは品川1強であることがうかがえる。
富山県内のトヨタ系ディーラーは、この品川グループに良くも悪くも引っ張られる面があり、今回の水素ステーションでも事業者の一方である協議会内で、各ディーラーも中心的な役割を果たした。
ところが、石川県内は旧トヨペットと旧カローラの「シーグループ」と、旧トヨタ店と旧ネッツの「ハートグループ」が拮抗している。
ステーション建設は数億円単位の費用が必要とされる中、互いの出方をうかがう局面が続いたのではないだろうか。
一方、関西圏に近い福井では、事業者に大阪の岩谷産業が名を連ねた。例えば首都圏の各都県のステーションには東京のENEOSが事業者として参加しているように、大資本が強力にステーション開設を後押しした。この点、石川は関東と関西、東日本と西日本の境目のような立地であることからも、積極的に設置しようという大資本が現れなかったのではないだろうか。
そんな中、重い腰を誰も上げないことに業を煮やし、最後発になりたくない石川県が事業者として出ていかざるを得なかった、という感じか。
以上、妄想に近い推測だが、当たらずも遠からず、といったところではないだろうか。