東証マザーズ上場で、農産物の市場外流通に強みを持つ農業総合研究所(和歌山市)は2021年11月25日、富山市公設卸売市場で卸売りを手掛ける富山中央青果(富山市)と、12月に資本業務提携を結ぶと発表した。
両社は昨年秋に業務提携している。今回、富山県産の農産物の販路拡大や全国の農産物の北陸での流通強化に向けた取り組みを前進させるため、資本業務提携に至ったようだ。
具体的には第三者割当増資と相対取引により、農総研が富山中央青果の株式を取得し、持ち株比率を33%にまで高める。
今のところ、富山中央青果が農総研の株式を購入し、持ち合いにするつもりはないとみられる。
両社の連携は非常に面白い。富山中央青果はどちらかと言うと伝統的な卸業者で、農総研は農業ベンチャーで産直販売を行う。一見して反目し合いそうだが、両社が力を合わせることで、新しいタイプの農産物流通が生まれそうだ。
しかも、現在の富山市公設卸売市場は完成から半世紀近くがたち、老朽化の中で再整備に向けた議論が始まっている。こういうタイミングで両社が組めば、再整備する卸売市場の姿にも、新しい考え方が吹き込まれるのではないかと思う。
資本提携?業務提携?どう違う?
経済ニュースなどで度々耳にする「資本提携」「業務提携」「M&A」という言葉。一体、何が違うのだろう。
筆者も経済記者として駆け出しの頃はなかなか理解ができなかったが、ある例え話でようやく理解できた。今回は上記の3つの言葉を、人間関係に落とし込んで紹介しよう。
①「業務提携」 … 友人関係
自分たちが友人であることを、わざわざ対外的に示すこと。
「俺とAは仲良しなんだ!だから今日も昼飯は一緒だったし、放課後は図書室で勉強して、分からないところを教え合うんだ!」
基本的に金のやりとりはなく、互いの足りない部分を補い、得意な部分を相乗りして利用する打算的な関係でもある。
もっとも、片方にしかメリットのない友人関係というのは成り立ちにくい。意識的であれ無意識的であれ、双方に何かしら利点があることが前提になりやすい。
②「資本提携」 … 親戚関係
業務提携より1歩進んで身内になる。単なる友人ではないから、多少のことでは簡単に縁が切れないし、大げさに言えば人生の一部を共有している。
「おじさんには小さい頃から、お年玉たくさんもらったし、遊びにも連れていってもらった。俺も大人になったんだから、困ったことがあったら何でも言ってよ!」
親戚だから、必ずしもギブ&テイクが常に成り立たなくてもいい。
甥(おい)が志望校に合格すれば、おじさんにとって具体的な得がなくとも「一族の誇りだ!」と喜ぶ。まあ、もしかしたら、いずれ甥は大出世して、今度はおじさんの子に多額のお年玉をくれるかもしれないが。
企業で言えば、業務提携は独立した企業同士として双方にメリットが見込めない取り組みは実行しにくい。この点、資本提携は分かりやすいメリットが片方にしかなくとも、身内なんだから文句も言わない。だから取り組みの幅は広がる。
それに、一方が儲かれば、いずれ巡り巡ってもう一方も儲かる可能性がある。
③「M&A」 … 婚姻関係
企業の合併や買収は結婚に近い。出自の違う2人が、互いに惹かれ合い、一心同体、運命共同体になるのだ。
「2人で力を合わせれば、シナジー(相乗効果)が生まれ、どんな困難も乗り越えられる!」
病める時も、健やかなる時も、共に支え合うのだ。
ただ、そんな誓いもむなしく、残念ながら関係が破綻する場合も、ある。
そもそも企業というのは「法人」であり、法律によって疑似的に人格を持たせている存在。だから、面白いことに、人間と同じようなことが起こるのだ。