百貨店業の大和(金沢市)は2021年11月29日、2022年4月の東証による市場区分の見直しに伴い、スタンダード市場を選択する申請書を提出した。
もっとも、大和は「株主数」「流通株式数」「流通株式時価総額」「流通株式比率」の4項目ある基準のうち、流通株式時価総額の基準を満たしていない。上場維持基準は10億円だが、大和の場合は9.16億円となっているのだ。
その他の3項目は基準をクリアしているが、未達項目があるため、大和は基準充足に向けた計画書を作成した。
これによって経過措置を受け、スタンダード市場に上場できる(はず)。
大和はコロナ禍に入って赤字基調となっており、コロナ収束に従い、業績の改善と株価の上昇も見込まれる。流通株式比率や流通株式数が基準を達しているということは、株価さえ上がれば流通株式時価総額は基準を上回る可能性もあるだろう。
今後の計画は「権威」「有力」
ただ、スタンダード市場選択を告知するプレスリリースで、今後の方針として記された内容には疑問を感じる点もある。
「権威美術催事」「権威ブランド企画」「地元有力企業との取り組み拡大」といった、いかにも拡張高い文言が多く見られたことだ。
品質を追い求める百貨店らしい姿勢と言えばそうなのだが、近年はそうした「敷居の高さ」ゆえ特に若年層から敬遠されてきたきらいがある。
そうしたスタンスは「=時代遅れ」とのイメージで語られてきた。
都会の一部百貨店のように、大手雑貨ショップに大きな面積を貸し、全世代に受け入れられる代わりに「場所貸し業」になるのが良いとは思わない。
だが、確実に言えるのは、若者を取り込まなければ未来はないということ。上記スタンスの上に「新しいECビジネス」「新しい商品、企画」と言われても、自己矛盾しているように感じてしまう。
他の小売業者と棲み分け、将来にわたる優位性を築く上で、一定の気品や敷居の高さは有用だ。しかし、過去の惰性で「百貨店ってのは、そういうもの」と考えているとすれば危険だろう。
百貨店の包装紙≒アマゾンの段ボール
今の若者は百貨店の包装紙にくるまれていようが、アマゾンや楽天の段ボールにくるまれていようが気にしない。
好景気の経験が乏しい中、30代の筆者を含めて「大事なのは中身(コスパ)」という感覚が染みついている。大和がこれから対峙すべき相手は、そういう世代だ。「権威」「有力」といった装飾を抜きにして、純粋に素材で勝負すべき土俵なのである。