KOKUSAI ELECTRICが23年10月25日、東証プライムへ新規上場/富山市にマザー工場の半導体製造装置メーカー

KOKUSAI ELECTRICが23年10月25日、東証プライムへ新規上場/富山市にマザー工場の半導体製造装置メーカー

2023年9月21日

富山市八尾町にマザー工場を置く半導体製造装置メーカー、KOKUSAI ELECTRIC(東京)が2023年10月25日に東証プライム市場へ新規上場することが決まった。

後述するが、KOKUSAI ELECTRICは日立製作所の子会社だった「日立国際電気」が前身。日立国際電気は2018年3月に上場を廃止しており、今回は5年半ぶりの上場となる。

続報は以下のリンクから

【続報①】富山に拠点のKOKUSAI ELECTRIC、時価総額は約4,200億円超に/ソフトバンク以来の大型上場

富山市にメイン生産拠点を構え、2023年10月25日に上場する半導体製造装置メー…
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【続報②】富山に拠点のKOKUSAI ELECTRICが上場、時価総額は5,000億円超えに/初値は売出価格より15%高

富山市にメインの生産拠点を置く半導体製造装置メーカー、KOKUSAI ELECT…
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BtoB企業ゆえ、一般にはなじみが薄いかも知れないが、実はかなり最先端のグローバル企業。筆者は以前、生産拠点に入って取材した経験があり、それも踏まえ、どんな企業か紹介する。

売上収益は2,457億円、当期利益403億円

今回の上場申請に向けてKOKUSAI ELECTRICが作成した有価証券報告書によると、同社は連結子会社が6社あり、決算は国際会計基準を採用している。2023年3月期の連結売上収益は2,457億円、営業利益は560億円、当期利益は403億円となっている。

従業員数は2,429人(2023年3月31日時点)で、このうち926人が富山市八尾町の富山事業所で勤務している。また、100%子会社の国際電気セミコンダクターサービス(富山市)では191人が働いている。

富山事業所は兼六園と同じぐらいの広さ

大きなメーカーの工場というのは、事業所内を車で移動しなければならないほど広いもので、KOKUSAI ELECTRICの富山事業所も例外ではない。

前述の有価証券報告書によると、KOKUSAI ELECTRIC富山事業所の敷地は10万7,134㎡ある。さらに、国際電気セミコンダクターサービスも3万1,776㎡あり、合わせて13万8,910㎡となる。

兼六園観光協会のホームページによると、兼六園は約11万4,000㎡。富山市の富岩運河環水公園が9万8,000㎡ということを考えると、KOKUSAI ELECTRICの敷地の広大さが分かる。

その富山市の拠点は八尾の工業団地のようなところの一角にある。生産棟はクリーンルーム化されており、取材に行った際は全身、防護服を着て建屋内に入った記憶がある。

筆者が事業所を訪れたのは2年ほど前。当時、KOKUSAI ELECTRICに接するのは2度目で、富山市内のビルで開かれた会見に1度だけ出席してから5年ぶりの取材だった。それにもかかわらず、総務担当者が筆者の名前を覚えてくれていた。優秀な人がいるものだと驚いた。

さて、事業所内の撮影には知財部門の担当者が同行し、写り込んで良いもの、ダメなものを厳しく指定された。「大げさだなあ…」と思ったが、それだけ厳格だったのは、KOKUSAI ELECTRICの製品が、それだけ最先端の技術を用い、納入先が納入先だからだ。

主要顧客はサムスン、TSMC

有価証券報告書を見ると、2023年4~6月の販売高は327億円で、構成比26.3%を占める最大のお客さんはサムスン電子(86億円)だった。2位は台湾のTSMCで12.3%(40億円)となっている。

富山事業所は富山市の山間部、八尾町にある。そんな田舎(失礼に感じる方がいたら、すみません…)に、サムスンやらTSMCを相手に、世界最先端の半導体製造装置を作っている会社がある。筆者は取材後、妙に誇らしい気分で事業所を後にしたと記憶している。

富山に89億円投資、砺波の新事業所に247億円

その半導体業界、足元は世界的に調整局面に入っているとも言われるが、長期的には市場が拡大傾向にある。今回、KOKUSAI ELECTRICが株式上場に踏み切る狙いは、信用度を上げて優秀な人材を募りたいのはもちろん、積極的な先行開発投資を進めるためでもある。

富山市の富山事業所では2024年3月までに、89億円を投資して設備を新設している。また、砺波市には247億円を投じて新事業所を建設中で、2024年7月に工事が完了する予定となっている。

富山事業所内には2023年3月現在、研究開発用装置が70台強あるが、さらに30台規模で追加投入を計画しているという。

前身は「日立国際電気」

ここで、KOKUSAI ELECTRICの歩みを年表で振り返ってみる。

1949年、 国際電気株式会社が設立

1956年、半導体製造装置事業を開始

1961年、国際電気株式会社が東京証券取引所上場

1989年、国際電気システムサービス株式会社(現在は富山市の株式会社国際電気セミコンダクターサービス)が設立。富山工場が操業開始

2000年、国際電気株式会社・日立電子株式会社・八木アンテナ株式会社が合併し、株式会社日立国際電気に商号変更

2009年、株式会社日立製作所の連結子会社となる

2017年、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.を成膜プロセスソリューション事業の分割による売却先に選定。特別目的会社「HKEホールディングス合同会社」設立。HKEホールディングス株式会社に組織変更し、株式会社日立国際電気の公開買付け

2018年、株式会社日立国際電気が上場を廃止。会社分割により株式会社日立国際電気の成膜プロセスソリューション事業をHKEホールディングス株式会社が承継し、株式会社KOKUSAI ELECTRICに商号変更

現在はKKR HKEインベストメント(ケイマン諸島)が株式の70.77%を保有する親会社となっている。

今回の再上場に合わせた新株発行は5,884万7,600株で、海外で3,045万株余りを売り出す予定。オーバーアロットメントによる売り出しは882万7,100株となる。IPOサイトを見ていると、価格は1,890円と想定されている。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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