JR西日本、2022年3月のダイヤ改正で「かがやき」定期列車を削減、臨時列車に変更

JR西日本、2022年3月のダイヤ改正で「かがやき」定期列車を削減、臨時列車に変更

2021年12月18日

JR西日本は2022年3月12日のダイヤ改正で、これまで定期列車として毎日10往復(20本)を運行してきた北陸新幹線「かがやき」のうち、4本を臨時列車に変更する。

コロナ禍でのJR西の苦戦ぶりは、このサイトでも何度か書いてきた。鉄道需要は足元で緩やかに回復しつつあるとは言え、これだけリモートワークやオンライン商談が根付いた今、仮にコロナが落ち着いても、特に新幹線需要は以前と同じ水準までは戻らないとみられる。

そんな中、早めに定期列車の比率を下げ、需要に応じて弾力的に運用できる体制を整える狙いがあるとみられる。

加えて言えば、JR西の社員数は徐々に減っている。労働力が不足する中、限られた人員を有効活用する意味でも、柔軟な運行体制を組む重要性はある。

氷見線が完全ワンマン運行に

その文脈で言うと、今回のダイヤ改正では高岡~氷見を走る氷見線が完全ワンマン化される。これまでもJR西は在来線で車掌が同乗しない「ワンマン」の比率を高めてきたはずだが、ついにその移行が完了するようだ。

富山県内を走るJR在来線は3つ。氷見線、城端線、高山線で、このうち城端線と高山線は快速系列車を除いて既にワンマン化されている。よって富山県内を走るJR在来線は来年3月で完全ワンマンになる

石川県では七尾線が既にワンマンになっているはずだ。

ワンマンになると、車内で乗車区間が急きょ変わった際に車掌から切符を買ったり、乗り換えについて尋ねたりできなくなる。

もっとも、それに慣れた年配の利用者はまだしも、若い世代はアプリやネットで乗換案内を調べるし、切符もICカード化されれば、乗った分だけ自動的に精算されるから、車内で切符を買うこともなくなる。現状で困る人はいるだろうが、だいぶ少数派になりつつあり、車掌の必要性が低くなっているのは確かだ。

サンダーバードは増発

北陸と関西を結ぶ在来線特急「サンダーバード」は平日、週末とも運行本数を増やす。

月曜~木曜は現状の定期列車が42本で、11月はコロナの影響で32本となっていたが、ダイヤ改正後は44本になる。週末(金曜~日曜、祝日)は現状が定期42本、11月が38本のところ、50本にする。

コロナ禍前、サンダーバードの運行本数は1日25往復だったはずで、週末はコロナ前の水準に戻すことになる。

一方、中京方面の「しらさぎ」は平日の本数を削減する。現在は定期32本の設定のところ、30本にする。週末は32本のまま据え置く。

金沢~和倉温泉の「能登かがり火」は1往復を減らす。

金沢~七尾の本数、1割超の減少

七尾線(金沢~七尾)は平日、土曜・休日とも本数を減らす。

平日は現在50本のところ、1割超の減少となる43本とする。土曜・休日は46本から41本。

ただし、金沢~高松の平日は4本から7本に、土曜・休日は4本から5本に増やす。これにより、線区の合計は平日が50本、土曜・休日が46本で、いずれも改正前から4本減となる。

加えて、終電時刻を切り上げる(早める)

これは働き方改革や労働力不足などに伴う全国的な潮流で、金沢から七尾に帰る終電は、これまで23時06分の金沢発だったが、ダイヤ改正後は22時19分金沢発になる。40分ほど早く出なきゃならないということだ。

ちなみに、金沢~高松はこれまでの23時44分発から23時19分に早まる。

【コラム】お客様は神様じゃない

鉄道会社が本数を減らしたり、終電時刻を早めたりすると、必ず無条件で上から目線で非難する人が出てくる。でも、終電にしろ本数にしろ、電車の運行体制に合わせて利用者が行動すればいいだけじゃないか。

お客様は神様じゃない。鉄道会社は奴隷ではない。

確かに、行政の補助金で実質的に赤字を補填している路線もあるし、税金で利用促進策を打ってもらう場合もあるし、詳しく見るとムダの多い組織ということもある。

だが、例えば終電の繰り下げを非難する人は、年に何回、終電に乗るのか。毎日のように残業があって「週に4回は終電に乗る」という人なら、大いに文句を言えばいいが、多くは年に数回、2次会や3次会まで飲んだ帰りに使う程度だろう。

本数だって、鉄道会社も採算が合うのなら本数を多くして売り上げを増やしたいものの、如何せん利用が少ないから減らしているのだ。一企業として考えれば、利用の低調な分野を減らすのは当たり前だ。無理に本数を維持すれば、その赤字分を補填するため路線全体の値上げにつながる可能性もある。

偏見も交えた経験則で言うと、やたら上から非難する人に限って、日常的な移動は車を使っていたり、基本的に通勤・通学時間帯しか利用していなかったりする

「大所高所」から非難するのは結構だが、まずは自身の利用実態を振り返ってみてはどうか。年に数回の自分の飲み会のために、鉄道会社の社員は毎日、日付が変わるまで電車を走らせなければならないのだろうか、と。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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