使命感を持ち真っすぐ歩く 「経営者になるためのノート」/柳井正(PHP)㊤

2021年8月8日

山口の中小企業を継承して「ユニクロ」を始め、世界的企業のファーストリテイリングに成長させた柳井正さんが、将来を背負う社員を教育するために作ったのが本書。もともとは社外秘のノートだったらしい。

(出典・ファーストリテイリング公式ホームページ)

書名は「経営者になるための」だが、いわゆる「社長」を目指す人のみに向けたものではなく、ビジネスマンとして長期的に成果を出すための心構えについて書いてある。

本書に最も多く出てくる言葉は「使命感」。巷に「超速で〇〇」「10日で分かる××」「△△術」といったノウハウ本が溢れる中、あえてそうした「近道」を提示しない。だから、そうした書籍に慣れた人は「イマドキ使命感?」と感じるかも知れない。

柳井さんが示すのは、目的地まで最短でたどり着ける近道を探すのではなく、とにかく正しい道を真っすぐに歩くこと。社員にとって、正しい道をしっかりと歩むことが長期的に見た最適解だと言う。

生産性の向上策や時間管理術など、今すぐ役立つノウハウを身に着けるのは、ちょうど、華やかな衣服を着替えるのに似ている。これに対し、本書で紹介するのは自らの筋力をアップさせる筋トレの方法であり、むしろそのための普遍的な考え方、経営に関する哲学である。

 

〈ポイント〉

  • 「経営者」とは使命感や存在意義を考え、成果をあげる人のこと。
  • 使命を実現するために必要なのは「変革する力」「儲ける力」「チームを作る力」「理想を追求する力」の4つ
  • 大きな目標を掲げ、チーム内で共有し、現場を大切にすることで、理想の実現に近づく

 

異常なほど大きな目標を

経営者とは顧客や社会、株式市場に約束したことを実現させる(成果をあげる)人のことを言う。

(出典・ファーストリテイリング公式ホームページ)

それに当たり、まずは会社や自身は何のためにあるのかという使命感や存在意義をたださなければいけない。使命感の実現に向けた行動を考えるべきであり、だから、たまたまの「結果オーライ」に満足すべきではない。組織の一員でも、独立自尊の気持ちを持つことが大切である。

目標は異常なぐらいに高く持たないといけない。ありがちなレベルの目標では、既存の発想から抜け出せないからだ。新たな考えで取り組まなければ到達できない目標を掲げることで、結果としてイノベーションが起こる。

ゴールから考え始め、そこに到達するため逆算して努力する。1も2もなく、実行すること。ダメなら違う方法を試し、トライ&エラーを繰り返す。高い目標に向かって努力すれば、失敗しても何かしらの成果は残る。

最初から安定志向で、安定成長をしている会社はない。(中略)変化を機会にするくらいの気持ちで経営をやっていかない限り、お客様に見放され、会社は消えていく

第1章 変革する力

リスクのないところに利益はない。

実行に当たり、社員と経営者は役割が異なる。社員は現場で懸命な分、盲目的になりがちなため、経営者は仕事自体の意味を引き出し、社員の能力を引き出す必要がある。

その中で、上司は部下に嫌われたくないがためだけに、変に「物分かりの良い」上司になってはいけない。部下が自分の基準で仕事を完成し、それで良いと思ってしまうからだ。

もの分かりがいい上司は、部下の成長機会を奪っている。これでは強いチームは作れないし、イノベーションを起こせない

第1章 変革する力

矛盾と戦い、「即断即決即実行」で解決する

「儲ける」という言葉は誤解を生じやすいが、手っ取り早い方法や誤魔化しで得た「もうけ」が長続きするはずもなく、当たり前のことを積み重ねて改善を続けることが肝要だ。

変化に気付いたら、すぐに手を打つ。変化の速い時代、経営のスピードは重要になっている。

(変化に)先んじて気づいたならば先んじて実行。つまり、間違えることを恐れずに即断即決即実行です

第2章 儲ける力

実行力こそが大事。「報告すること」「会議をやること」自体が目的化してしまっている組織は注意しないといけない

トライ&エラーを繰り返す中、経営者はあくまで「リアル(現実)」に目を向け、問題点を把握する。大切なのは「簡単なこと」ではなく、効果の大きなことや取り組まないと大変なことになる事項である。

そういう意味で、プロの仕事は複雑な「矛盾」の解決でこそ発揮できる。他人が諦めるところにこそチャンスがあり、大きな利益が得られるからだ。本質的なところまで問題を掘り下げ、自問自答し、解決することで大きく儲ける力を養おう。

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〈 ㊦に続く 〉

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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