㊤では本書がいわゆる「経営者」のみならず、長期的な成果を求めるすべてのビジネスマン向けであると紹介した。そのために必要な4つの力のうち「変革する力」「儲ける力」について、内容を要約した。
㊦では残る2つの力「チームを作る力」「理想を追求する力」に関する記述を要約して紹介する。
部下は言葉ではなく「背中」を信じる
リーダーはチームを勝利に導くのが主な役割。そのためには目標を共有し、チームのメンバー(部下)が達成感を得たり、成長を実感できたりして自己実現に近づけるようにしなければならない。
それでは、メンバーがついてくるのは、どんなリーダーだろうか。
最も大切なのは言行が一致しており、それらが首尾一貫していること。そして、それらを先頭に立ち、率先して実施できているかどうかが大切になる。
あなたは、あなた自身が言ったこと、約束したこと、あるいはあなた自身が言っていることの最大の実践者か。メンバーはあなたの言葉を信じるのではなく、言葉の後の、あなたの背中に信頼性を見出すもの
第3章 チームを作る力
「首尾一貫」と言っても、容易に変えてはいけないのは価値観や信念、方向性であって、その時々に取るべき具体的な方法論は状況に応じて柔軟に変えるべき。
思い付きを押し付けたり、話す相手によって態度や発言内容が変わったり、損得でフラフラと考えを変えたりする人には、メンバーはついていかない。ひとことで表現すると、部下は「人としての誠実さ」を見ている。
良いチーム、強いチームを作るためにリーダーが心掛けることは次の点。
- 目標は何度も何度も共有する。その上で責任を個人レベルで明確化する。
- メンバーの長所を伸ばす。リーダーによる期待は目や態度、接触の仕方などでメンバーに伝わる。
- 1人1人の多様性を重んじる。マニュアル的、ステレオタイプ的に判断せず、個別具体的に対応する。
責任を個人レベルで課すのは、メンバーがそれぞれ「自分の仕事」と自覚し、主体的に考えることを促すため。それぞれに権限を与え、自由に考えさせる。その際、本質的に達成してほしいことを伝え、自由にさせた結果、足りなければ指摘して正当な評価を下す。そのことで成長を促す。
リーダーが自身に課すべきこともある。自分で自分に期待すること、自己変革すること、自己管理することである。
成長を考え、準備している人間にしか未来はこない
第3章 チームを作る力
官僚主義を超えて
会社が大きくなったり組織が硬直したりすると、官僚主義に陥りやすい。官僚主義は内向きの思考になり、全体最適ではなく部分最適を優先するようになり、考え無しに前例を重んじるようになる。
ただ、ビジネスをする上では実力主義を進めるべきだ。平凡な成果は認めず、低い目標設定も却下する。なぜなら、そうした成果や目標によるシワ寄せは自分たちの顧客にいくからである。
会社にとって最も大切なのは使命感であり、使命感とは会社の存在価値そのもの。自分たちの全ての判断基準になるものである。
経営には常に危機感が必要となる。そして危機の時こそ、リーダーの資質が問われる。
順調な時は誰が経営者でも何とかやっていける。危機に際してはリーダーが素早く適切な判断を下さないと、致命傷になりかねない
第4章 理想を追求する力
「青臭さ」の真実味
いかがだっただろうか。筆者はページをめくる度に感じたのは、内容の「青臭さ」だった。
ただ、驚くのは、そうした青臭いことを、ユニクロを作り、世界的ブランドにまで押し上げた人が語っている点にある。それは恐らく、地方の一中小企業だったにもかかわらず「(世界ナンバー1アパレル企業の)GAPを超える」と言い始めた時代から大きくは変わっていない。
つまり、原理原則とか基本となる考え方は、すぐに風化する小手先のテクニックと違い、普遍的な価値を持っているからだ。「使命感」や「信頼」という言葉がこれほど出てくると、なんだか気恥ずかしさすら覚える。しかし、そうした基本的なことを愚直に信じて継続してきたからこそ、今日のファーストリテイリングがあるのだろう。