豆腐製造のアサダ食品総業(射水市)が今月末(2022年3月末)をもって廃業することが分かった。
アサダ食品総業によると、同社の創業は1947(昭和22)年ごろ。業歴70年以上を経過している老舗企業で、豆腐のほか、がんもなども製造していた。
今回は経営が行き詰まって潰れる「倒産」ではなく、経営体力のあるうちに自主的に事業をやめる「廃業」となる。廃業の背景について、担当者は「近年の売り上げ不振による」と説明した。原材料高も利益を圧迫し、コロナ禍での業況の悪化も追い打ちをかけたという。
廃業まで少しだけ時間はあるが、多くの小売店では既にアサダ食品総業の商品が並んでいないようだ。
アサダ食品総業は射水市に本社、砺波市に工場を置き、約50人の従業員を抱えている。現在、従業員は再就職などに向けて動いているところらしい。
ポンキッキ、めざましテレビのスポンサー
残念ながら筆者は記憶していないが、インターネット上では、その昔、アサダ食品総業がフジテレビ系の子ども向け番組「ポンキッキ」「めざましテレビ」などのスポンサーとしてCMを流していたことを懐かしむ声が出ている。
アサダ食品の「とうふステーキ」のCMは以下のリンクから。
進む価格競争
近年は大手スーパー、地場スーパーともプライベートべランド(PB)商品の開発が盛んで、豆腐もその対象となって価格競争が激しくなっている。週末には1丁30円ほどでたたき売られているケースがあることは、スーパーに通う人ならご存じだろう。
PB商品は小売業者が製造業者と協力して商品開発・販売を行い、価格はメーカー独自の商品であるナショナルブランド(NB)と比べて安いことが多い。消費者としては安価な方がありがたいので、余程のこだわりを持つ商品を除き、どうせ同じメーカーが作るなら割安なPB商品に手が伸びるはず。
一方、メーカーは難しい立場になる。価格競争の渦の中で長く生き残る道は大きく分けて、PB商品の製造を安価で請け負ってギリギリでしのぐか、付加価値の高い商品を作って価格以外(素材や製法など)を重視する層にアピールするか、の2択だ。
前者をとるなら、なるべく安く作れるよう設備投資や人的投資を含む生産効率化を進める体力やノウハウ、後者を選ぶなら、同業他社に先んじるだけの商品開発力が必要となる。
そうなると、いずれも十分ではない中小規模の事業者は徐々に淘汰され、大きな企業に集約されていく。
豆腐業者の施設数は9割減
東京商工リサーチが2020年8月に出したレポートによると、全国の豆腐業者591社の19年度の売上高は合計で2,450億円超。それだけ聞くと、なかなかの市場規模に思えるが、施設数はピークだった1960年度の5万1,596施設から、18年度には6,143施設に減った。50年ちょっとで9割近くがなくなったというわけだ。ここに集約化の証がみられる。
食品業界は「衣食住」の一角なので、一般的には市場が安定したイメージもあると思うが、中小業者にとっては、人口減少で国内市場が縮小する外部環境に加え、上記の価格競争を生き抜くために大きな同業者と競って消耗する状況に置かれている。
消費者からすれば、安価な商品が増えるのは嬉しい。ただ、低価格商品ばかりを求めると、特徴ある商品を作っていた地元業者が市場から退出せざるを得ず、結果として、店頭に並ぶ商品が、製造コストを削ぎ落した画一的な商品だけ、という事態を招きかねない。
だからと言って、自分1人が「地元業者を支援するんだ」と息巻いて高価な商品を買うわけにもいかない……難しい問題である。