※2022年11月28日に「28日も大幅高だが上ヒゲ出現」の見出し以下を緑色の字で追記しました。
富山市に本店を置く第二地銀、富山第一銀行は2022年11月25日、2023年3月期の第2四半期報告書を関東財務局長に提出し、投資家の井村俊哉氏が新たに大株主になっていたことが分かった。
個人投資家に人気の井村氏が大株主名簿に名を連ねたことで富山第一銀行株は人気化し、25日の株価はストップ高で引けた。
目次
買い集めるのにかかった費用は??
第2四半期報告書によると、井村氏は9月30日時点で富山第一銀行の発行済み株式総数の2.22%に当たる142万株を保有していた。
2022年3月期の有価証券報告書を見ると、大株主トップ10に井村氏の名前はない。仮にこの半年間で142万株を買ったと仮定すると、上のグラフの通り、420円前後で推移してきたので、
420(円)×1,420,000(株)=596,400,000(円)
ということで、約6億円をかけて取得したことになる。最近の値動きを見る限り、目立った上下はないので、少しずつ少しずつ買い集めていったのだろう。
ちなみに、報告書は9月30日時点の状況なので、例えば、10、11月中や25日のストップ高に乗じて既に売り抜けている可能性もないわけではない。
(今回、筆者は初めて知ったのだが、富山第一銀行の大株主順位2位は北陸銀行、3位は福井銀行なんだな…)
非常に地味だが堅実な銀行
井村氏に関する逸話は他に譲ろう。
筆者は地元紙の記者として富山第一銀行を何度も取材したことがあるが、印象としては「非常に地味だけど堅実な良い銀行」という感じだった。
同族経営の銀行だが、社長は2代続けて日銀の出身者。取材で最も驚いたのは、創業家の現会長が、取引先を集めた懇親会の冒頭あいさつに際し、立ったまま1時間以上も経済に関する講義を繰り広げたのを初めて見た時だ。
こちらはいつ終わるか分からないので、とりあえずメモする。でも、なかなか終わらない。結果、危うくノートを使い切るぐらい書き込んでいた。
新聞社を退職後は富山第一銀行株を買ってみた時期もあった。でも値動きが小さく、このままでは機会損失が大きいと判断し、大した得も損もない状態で売った記憶がある。
北陸の他の銀行と比べてみる
それでは、なぜ井村氏が富山第一銀行に目を付けたのか探るため、いくつかの指標で、富山第一銀行と北陸で他に上場している地銀(北陸銀行、北國フィナンシャルホールディングス、福井銀行、富山銀行)を比較してみよう。
※情報は「株探」に基づく。北陸銀行は北海道銀行との持ち株会社「ほくほくフィナンシャルグループ」の数字を使用した。
PER(利益に対して株価がどんな水準か)
PERが高いと、利益額に対して株価が高い状態を指す。逆に言えば、PERが低いと、利益額の割に株価は割安と判断できる。
福井 20.8倍
富山 13.4倍
北國 11.6倍
富山第一 8.9倍
ほくほく 6.7倍
PBR(持っている純資産に対し、株価がどんな水準か)
低ければ低いほど、株価は割安ということになる。
北國 0.52倍
富山 0.35倍
福井 0.29倍
富山第一 0.28倍
ほくほく 0.21倍
配当利回り(株価に対する配当の比率)
高ければ高いほど、投資額に対してたくさんの配当金をくれるということ。
ほくほく 3.70%
福井 3.31%
富山第一 3.17%
富山 2.70%
北國 2.23%
9月末の自己資本比率
高ければ高いほど、財務的に健全ということ。
富山第一 7.5%
富山 4.9%
北國 4.2%
ほくほく 3.7%
福井 3.1%
時価総額(企業の規模みたいなもの)
発行済み株式数×株価で示される。やや乱暴に言うと、株式市場から見た企業の規模みたいなもの。
ほくほく 1,217億円
北國 1,206億円
福井 365億円
富山第一 339億円
富山 101億円
筆者は銀行の決算に詳しいわけではないが、こうして見ると、富山第一は株価的にまあまあ割安である上、自己資本比率の高さ(全国で5本の指に入るぐらい)が魅力のように映る。
今回の日医工問題では、北陸、北國、富山の各銀行が債権の取り立て遅延の恐れに関する告知を出す中、富山第一は沈黙を守っている。
もともと融資しなかったのか、融資できなかったのか、融資していても大した金額ではないのか。それは分からないが、この辺りにも「地味で堅実」という雰囲気が現れている気がする。
そんな銀行が、11月25日の大引け後の時間外取引でさらにストップ高水準にある。今後の動きに注目したい(ちなみに筆者は手を出さない)。
【追記箇所】28日も大幅高だが上ヒゲ出現
富山第一銀行の株式はストップ高になった2022年11月25日の翌営業日に当たる28日、続けて大幅に値上がりしたものの、その日の最高値からは値を下げて引けた。
この日の最高値は25日の終値よりも100円高い604円。つまりストップ高水準まで買われた。ただ、その後は少しずつ売られ、結局は65円(12.9%)高い569円となった。
チャート的には「高値で買ってしまったので売りタイミングを待ち構える人が増えるため、値上がりしにくくなる」サインとされる「上ヒゲ(上髭、上ひげ)」が出現した。実際、25日の時間外取引(18時半時点)では、25日終値付近で取引されており「そろそろ祭りは終わりか?」との投資家心理が見てとれる。