【400万円ブリ狂騒曲】どんたくへ朝7時半に1番乗り/店側、超高級ブリで恩を売るつもりが 反感を買う結果に(最後に追記あり)

【400万円ブリ狂騒曲】どんたくへ朝7時半に1番乗り/店側、超高級ブリで恩を売るつもりが 反感を買う結果に(最後に追記あり)

2022年12月3日

サッカーW杯スペイン戦の翌日の2022年12月3日、筆者もまた決戦の日を迎えた。

どんたく(七尾市)が400万円の高値で競り落とした「天然能登寒ぶり」の新ブランド「煌(きらめき)」第1号が、金沢市の西南部店で限定販売されるのだ。今回以上に仕入れ値の高いブリを口にすることは一生ないだろうと思い、行ってみた。

結論を言うと、めったにないことで店側も不慣れなのは分かるが、だからこそもっと念入りに準備してほしかった。これでは、せっかくの好機や投資が逆効果だ、と感じた。

以下に当日の状況、考えられる改善点を書いてみる。


朝7時に起床。今季初めてヒートテックタイツを装備し、7時半に店へ到着した。

さすが、超高級ブリ。開店時刻の2時間前ながら、長蛇の列が…。

誰もいない。余裕の1番乗りである。

ホームページにも店の入り口にも販売に関する案内はない。とりあえず車内で読書。8時ごろにようやく車が4、5台来た。

8時半ごろ、行列ができ始め、急きょ店内に

8時半ごろ、ようやく車から出る人が現れ始め、入り口前に数人の列ができた。

ただ、あまりに寒いので、店側は開店時刻前にもかかわらず行列を店内に招き入れた。

店側の対応が良かったのは、残念ながらここまで。この後が最悪だった。

整理できない「整理券」…

実は行列を店内に入れる少し前、店の責任者らしき人物が告げた。「先着80人、10時半に整理券配布、11時に販売です」。その時点で疑問が沸く。「整理券って、先に配って混乱を回避するから『整理券』なんじゃない???

配布まで残り2時間。その間、ただただ立って待つことに…。もちろん早く並んだのは自己責任なのだが、かと言って買う権利が確定した後に何時間も並ぶのが普通だろうか?

9時半の開店の少し前に「10時半に整理券をもらえるまで立ち続ける権利を持つ先着80人」は定員に達した。

開店すると、店内は一般の買い物客でにぎわった。買い物客は80人の列を見てスタッフに何の行列か聞く。そんな来店客や整理券目当てで遅れてやって来た客に、スタッフが「ブリの販売は定員に達しました」と説明を繰り返す。

レジ待ちの列は許さないが、ブリ待ちの列は当然?

その「説明係」が混み合うレジ回りを眺め、店内アナウンスで「レジでお客様が待っておられます。応援お願いします!」と呼び掛ける。そして、また「もう定員です」の説明に戻る。

レジ待ちのちょっとした列は問題視するのに、ここで老若男女数十人が何時間も立たされている列は平気なの?

さっさと整理券を配れば、このスタッフもレジに応援に行けるのにな…。

そんな行列の殺気が通じたのか、店の責任者らしき人物が登場。「10時半から整理券を配布するって言っておいて、先に配ると、お叱りを受けて大問題になるので、予定通り10時半に配布します

もう「先着80人」は締め切ったんだから、その「お叱り」の人には、どのみち整理券を配れない。だったら、目の前にいる80人に早く配っても支障はない。「お叱り」を受けるのは「大問題」で、早朝から来店した人を長く立たせるのは問題じゃないのか。

つまり、最初から「先着80人に販売」と素直に言えば良かった。なぜ「整理できない整理券」を半端な時刻から配ろうと思ったのか。少なくとも、ホームページやSNSで販売の仕組みを周知すべきだった。

後述するが、取材応対も場当たり的。社内に人材がいなければ事前にノウハウを持つ社外の人(弊社でも承ります)に相談すべきだった。

整理券もらった人「腰が痛い」「酷い目に」

ようやく手に入れた整理券。筆者の後ろの60代男性が「アンタすごいな。2時間、微動だにせず立って読書とは。俺なんか、腰が痛くて痛くて。酷い目に遭った」とこぼした。

整理券の配布と販売までの時間は、店内で買い物に当ててもらう狙いがあったとみられる。だが、今回は筆者も含めて疲れ切っており、いったん自分の車に戻る人も散見された。

販売場所も定まっておらず…

肝心の受け渡し場所は販売直前まで流動的だった。数分前にカメラマンたちの意見を聞いて決めている様子で、整理券を持っている人は店内をウロウロ。

テレビ局は機材が大きいし、複数人が取材に来る。イベント時は広い販売場所を確保し、カメラが客や商品を撮りやすい角度の撮影場所も設けた上で、客の動線も空けておかないといけない。それなのに、今回はどれもできておらず、報道陣、整理券を持った人、一般の買い物客が滞留していた。

しかも、店側は当初、販売の順番を整理券番号に関係なく一律にすると説明。2時間も立たされた客に「早く列にお並びになった方は、たぶん販売時も前に並ばれるでしょう」とテキトーなことを言い、列の先頭近辺から苦言を呈された(その後、番号順の受け渡しになった)。

朝7時半から3時間半かけて購入したブリの刺し身5貫。高揚感や達成感はなく、とにかく徒労感が残った。

満車の駐車場/それもそのはずで…

540円だけ払って駐車場に出ると、満車状態。それもそのはず。行列の80人が、たぶん50台ぐらいの車で来て駐車場を占拠しているから。

「どんたくの駐車場がいっぱいやから、今日は他の店に行くか」という人もいただろう。どんたくが代わりに得たのは、苛立ち、疲れ果て、500円の刺し身か寿司だけを買って帰る客たちだったわけだ(もちろん、他の買い物をしていた客もいた)。

どんたくとしては、超高級なブリの購入で、地元の第1次産業を盛り上げるとともに、買い物客への豪華還元という意味合いもあっただろう。

ところが、現実は準備・ノウハウ不足と手際の悪さが目立ち、行列から不満の声が漏れ、悪い意味で得難い経験を提供することに。筆者にとって、この刺し身は「400万円の超高級ブリのカタワレ」というよりも「何時間も立たされ、ようやく手にした刺し身5切れ」である。

表題にある通り、ブリを安値で販売して恩を売るつもりだったのに、大いに反感を買う結果になってしまった、という残念な話になった。

改善点まとめ

さて「高級ブリを廉価で買わせてもらったのに、文句ばかり抜かすなよ」と言われそうなので、ここに改善点をまとめてみる。

  • 簡潔で、誰でも理解できる販売方法にする。今回で言えば「9時半開店、先着80人で終了」など。
  • 販売方法はホームページやSNSで告知する。チラシは締め切りがあるので仕方ないか。さかのぼって、最初の報道時点でマスコミに「原稿の最後に『3日に先着〇人に販売する』って盛り込んで」とお願いする。
  • 当日の動きは一般客への影響が最小限で済む動線を考える。今回なら、初めから休憩スペースへ並ばせ、すぐに受け渡せるよう独立した動線にしておけば、一般客に迷惑がかからないし、行列の客も疎外感や苛立ちを抱かなかった。
  • マスコミ対応は上記のように、あらかじめ「撮影可能エリア」を決めておく。会社によってはカラーコーンやテープで客の動線と区切ることも。マスコミには集合時間を決めて伝えておけば、1社が来るごとに責任者が右往左往することなく、1度で案内できる。
  • そもそも「整理券」とは何なのかを把握しておく。

全国的に注目され、ファンをたくさんつくる好機は、逆に転べば反作用が大きい。「ピンチはチャンス」であるように「チャンスはピンチ」でもあるのだ。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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