日銀が2021年10月7日公表した地域経済報告(さくらレポート)によると、全国の9地域のうち、北陸を含む4地域は景気判断が据え置かれ、他の5地域が引き下げとなった。つまり、引き上げられた地域はゼロだった。
全国9地域の景気判断を表す文言を見てみると、景気回復の減速ぶりを示す言葉が散見されるようになっている。
まず、以下に、比較的ネガティブな状況だと指摘されている7地域の文言の一部を抜粋する。
- 北海道 「横ばい圏内の動き」
- 東北、東海、中国 「持ち直しの動きが一服」
- 近畿 「下押し圧力が強い」
- 四国、九州・沖縄 「持ち直しのペースが鈍化」
一方、比較的ポジティブな状況とされる2地域も、必ず注釈のような言葉がついている。
- 北陸 「一部に下押し圧力が続いているが、総じてみると持ち直している」
- 関東甲信越 「サービス消費を中心に引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」
なお、北陸地域の概況としてレポートで紹介されている事業者の声がリアルで、現状を表していると思うので、これも一部を抜粋する。
- 建機部品の需要が堅調で、受注に生産が追い付かないから、ラインを増設する。
- 世界的にEV需要の拡大が見込まれる中、車載向け電子部品の新工場建設に着手した。
- 受注は回復傾向にあるが、部品不足に伴う自動車減産の影響が懸念され、設備投資を控える。
- 新車の受注は好調だが、メーカーの減産の影響で納車が遅れ、先行きが見通せない。
- 持ち家の受注は低所得者層で低迷している一方、高所得者層は駆け込み需要もあって、ほぼ前年並み。
- 資材価格の上昇に備え、前倒しで住宅を購入する動きがある。いずれ、コスト上昇分を価格に転嫁すると、顧客離れが生じる懸念も。
受注あっても喜べず
上のコメントを見ると、北陸の製造業者では、足元で景気の回復やコロナの収束見通しから受注が好調な様子がうかがえる。一方、それを作るための部品(半導体など)がなかったり、コスト高になっていたりして、順調にモノを作れない状況も垣間見える。
受注が多いことは好景気の最中なら、将来の売り上げを確保していることと同義だが、景気がさほど良くない場合は手放しで喜べない。
特に今のように「コロナ第●波」という状況が定期的に訪れる場合、設備投資計画が土壇場になって修正されることもある。これにより、せっかく入った受注案件がなくなったり、延期されたりして、売り上げにならない場合も懸念されるからだ。
足元では米国、中国などで、景気の回復ぶりが鈍化していることを示す事象やデータが相次いでいる。北陸も世界の一部である以上、その影響を避けることはできず、多少のタイムラグをもって大きな波が押し寄せてくるかもしれない。