食品スーパーを経営する大阪屋ショップ(富山市)は20日、2022年秋にネットスーパー事業に参入すると発表した。楽天グループ(東京)が今冬から提供を予定するサービス「楽天全国スーパー」に参加するという。
フルタイムで働く共働き世帯や子育て世帯などの利便性を上げ、これまで取りこぼしていたニーズを拾い上げるとともに、店舗との相乗効果を生む狙いがあるとみられる。
大阪屋の発表資料には、サービスの具体的な内容が記されていない。ここで、楽天グループによる「楽天全国スーパー」の説明が役に立つ。
楽天全国スーパーは全国のスーパーマーケット事業者に受注管理やオンライン決済の機能を提供するプラットフォーム。消費者はプラットフォームに郵便番号を入力すると、居住エリアへの配送に対応したネットスーパーを検索できるらしい。
つまり、生協のように、事前に発注した商品を自宅まで配達してくれる仕組みのようだ。
大阪屋は富山県、石川県に49店を展開している。店舗網を生かしてサービスにかかるコストを下げるためには、それなりに人口も店も多い地域からサービスを始めるとみられるので、富山市、高岡市あたりからスタートするだろう。
店舗が物流センター機能??
同業のアルビス(射水市)も現在、ネットスーパー事業の開始を目指して準備している。
報道によると、こちらはネットで注文した商品が、指定した時間、指定した店舗に行けば用意されており、帰宅途中に立ち寄ってすぐに商品を受け取り、自宅へ戻るような利用を想定しているらしい。
アルビスは店舗で商品を積み込み、各地を巡回する移動販売の「とくし丸」事業も拡大している(現在、10台が運行中)。
そう考えると、インターネットの浸透により、リアルの店舗は単に物を売る場所ではなく、あたかも店を物流拠点や倉庫のような機能も果たしている。そこから消費者の手元へ直接届ける拠点という意味合いが濃くなっている、ということだ。
最近、ある商店街の小さな靴店が、店内に間仕切りを設置し、陳列スペースを減らしていた。
その店は、もともと楽天市場での売上が大きい店だった。ここからは想像だが、このコロナ禍で人出が減り、ネット通販による売り上げが高まったのを見て、本格的にネットに比重を移すため、店舗の一部を倉庫や作業スペースに充てたのではないか。
店が果たす役割は時代によって変わる。「店で試着したのに、ネットで他の店から買うなんて、けしからん!」という小売業者の声も聞くが、そう嘆いていても仕方ない。自分がその「他の店」になる方法を考えた店のみ、この先も生き残れるのだろう。