【金沢百万石まつり】㊤百万石行列の前田利家公役が高齢化/さらなるマンネリ化を懸念

【金沢百万石まつり】㊤百万石行列の前田利家公役が高齢化/さらなるマンネリ化を懸念

2023年5月21日

過去に書いた記事をリライトしてアップしたものです

毎年6月頭に行われるイベント「金沢百万石まつり」のメイン行事、百万石行列の主人公が高齢化しているー。

2023年の主要キャストを眺めていて、石川県生まれの筆者は、こう思った。

「前田利家公役って、こんなに年配の人やった???」

筆者が幼少期に見た利家公役の芸能人が30代だったとする。子どもから見れば30代は立派な「オジサン」。でも、いざ自身が30代になっても、やはり利家公は「オジサン」なので、不思議に思ったのだ。

続編は下のリンクから

【金沢百万石まつり】㊦金沢は思考停止の悪癖「本物じゃなきゃ根性」を捨て、祭り名も「百万石」を取ったら?

2023年5月21日に下リンクの記事を書いたところ、想定を上回る閲覧数となった。…
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近似曲線が明らかな傾向を示す

過去に利家公役を務めた芸能人の年齢(当時)をグラフにしてみた。

1985年は一般公募。2020年は陣内孝則さんの予定だったが中止。同じく中止だった21年と予定通り行われた22年はいずれも竹中直人さん

「〇」が出演者の年齢(当時)。斜めに入っている直線はコンピューターが引いた「近似曲線」で、全ての点を総合した傾向を示している。

どうだろう?見事に右肩上がり(=高齢化)にある。

考えられる要因としては、①選考委員(?)が高齢化して年配の芸能人を好んでいる、②見に来る人が高齢化しているので客層に合わせている、が挙げられるか。

ちなみに、2023年に利家公役を務める市川右團次さんは、1963年11月生まれ。まつり当日は59歳なので、ちょうど近似曲線の少し上ぐらいか。

「来場者数」こそが大事

ところで、2022年に木村拓哉さんが織田信長を演じた「ぎふ信長まつり」の行列を見た人は46万人、2023年に松本潤さんが徳川家康を演じた「浜松まつり」は68万人だったらしい。

対する百万石行列は2022年が34万人で、2023年の浜松の半分。時期や地理条件、天候が異なるとは言え、2022年の金沢は3年ぶりだったのに前回(2019年)から8万人も減った。

しかも「ここは公道で、この人は芸能人だけど、マスコミ以外は撮影禁止」という意味不明ルールで炎上した。

2022年の百万石行列の様子。中央は利家の息子の利長公役(筆者撮影)

こう書くと「来場者数のために、まつりをやっているわけではない!」という言われそう。能登や富山県西部の由緒ある神事の祭りなら、そうだろう。でも、この批判は百万石まつりには全く当たらない。

百万石まつりは1952(昭和27)年に金沢市と金沢商工会議所が始めた。つまり、まつり自体は単なるイベントで、百万石行列は仮装パレードなのだ。イベントである以上、来場者数が成否の指標になるので、筆者は来場者数を重視している。

この点、30代の筆者から見て、2023年の百万石行列の主要キャスト(市川右團次さん、紺野まひるさん)は申し訳ないが全くピンとこない。

自分たちがよく知るはずのないキャストが平気で選ばれると「運営は俺たちのことなんて蚊帳の外なんだな」と疎外感を受けるもの。今年もさらに来場者数が減るかなあ…。

利家公が金沢に入ったのは47歳時

そもそも、1599年に満60歳で死去した利家公本人が金沢に入城したのは47歳当時だったとされる。年齢で言えば、最近なら2019年の加藤晴彦さん(当時44歳)、17年の保阪尚希さん(当時49歳)あたりが近い。

もっとも、戦国時代と現代では平均寿命や年齢への価値観が違う。昔の40代は今の60代ぐらいに相当し、むしろ「今がちょうど良い」という見方もできそうだが、今の方向性で何かが足りないのは明らか。

出演者を若返らせれば全てが解決するとは思わないが、他の類似イベントと来場者数を比べると、改善の余地は大きそうだ。

昔の紅白「今年もコレ観られた」

そう言えば、十数年前の紅白歌合戦は出演者が一部固定され、新たなヒット曲がなくても派手な衣装を着て出てくる役回りの名物歌手がいた。幼い筆者は「何が面白いのだ」と不思議だったが、祖母や曾祖母は「今年もコレが観られた」と妙にありがたがっていた。

マンネリ化と高齢化は相関関係が強いと思う。自分の周囲を見ていて分かるが、年齢を重ねると、昨日と同じ今日に安心する。前例踏襲がむしろ「是」とされるのだ。

でも、若者からすると「この間と同じかよ…」と物足りない。百貨店はいつまでも「高品質な衣料を…」と言い、新聞は念仏のように「紙の新聞こそ信頼の証しで…」と言い続け、若者から見放された。まつりはどうなる?

「シニアに配慮するな」と言いたいわけではない。安易に既存客に頼らず、常に新規客を開拓する工夫「も」しないと、何ごとも永続しないということだ。

その工夫はなされているだろうか?右肩上がりの近似曲線を見ていると、そう遠くないうちに「過去のイベント」として役割を終えそうな道を、ゾロゾロと行軍しているように思えてならない。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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