2024年「百万石行列」の観客数、金沢の人口を超えるか?/23年に「39万人は盛り過ぎ」と物議醸した金沢百万石まつり/市「集計方法は前年のまま継続」

2024年「百万石行列」の観客数、金沢の人口を超えるか?/23年に「39万人は盛り過ぎ」と物議醸した金沢百万石まつり/市「集計方法は前年のまま継続」

2024年5月30日

初夏の金沢を彩るイベント「金沢百万石まつり」の中心行事「百万石行列」が2024年6月1日に催される。北陸新幹線が敦賀に延伸し、キャストが石川県ゆかりの人気俳優である上に晴れ予報の今年、観客数は前年実績(39万人)どころか金沢市の人口(45万人)を超えた数字が発表されるかも知れない。

観客数について、昨年はX(旧Twitter)などで「さすがに多すぎない?」と懐疑的な見方が広がり、新聞による検証報道に発展した。それを受けて実行委員会は別の集計方法も検討したが、今年も従来通り「目視」で観客数を割り出すことに決めた。

※2024年6月2日追記 結局、行列の観客数は「41万人」と発表されました。

2023年は39万人/観客1人当たり30cm四方

昨年の行列から3日後の6月6日、当サイトは観客数に疑問を投げ掛ける記事を公開した。発表された観客数とルートの長さを照らし合わせると、観客1人に与えられる面積は30cm四方に満たないと試算したのだ。

詳しくは以下の記事にて。

百万石行列に39万人も!/「マンネリ」とか言ってスミマセン/大きく現実離れした盛況ぶりに脱帽

2023年6月2~4日に開かれた金沢百万石まつりで、メイン行事の「百万石行列」に…
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「肌感覚」で観客数を決めていた

7月1日には北陸中日新聞が「百万石行列 観客数 ほんとに39万人?」とする記事を公開。実行委員会のメンバーでもある金沢市観光政策課に関する箇所を引用する。

観光政策課は「行列を歩いているスタッフが例年の状況と比較をしながら、おおよその数字で出しているのが正直なところ」と答えた。「比較」と言っても、目視で数えているわけではない。結果として「昨年は上回っているが、コロナ前(二〇一九年は四十二万人)までには回復していないようだ」という、見た目の印象を経験値に照らし合わせて三十九万という人出を決めた。

否定的に捉えれば「肌感覚」で発表する数字を決めていたという内容。この点、今日(2024年5月30日)、筆者が金沢市観光政策課の責任者に取材した成果と食い違う箇所も一部あるので、そこを含めて今年の集計方法を以下に書く。

ベター中のベスト?

金沢市観光政策課によると、今年も過去と同じく、ルート上の沿道数カ所でスタッフが昨年の混雑具合との差を見る。さすがに、行列を歩いているスタッフが目視で観客数を見極めるわけではないらしい。

それにしても、現代では携帯電話の電波、各種センサーを活用し、もっと精緻に人出を計測する手法があるはず。肌感覚で確認するのは、あまりにアナログで曖昧なように映る。

2022年の百万石行列の様子

従来通りの集計方法を踏襲する理由についての説明を、筆者の言葉で要約すると、以下のようになる(丁寧に説明いただいたのですが、それだけに話が多岐に及んだため要約しました)。

正確性は他の方法に見劣りするかも知れない。でも、オープンなイベントである以上、どんな方法も結局は「推計値」になり、データ集計に時間もかかる。それならば速報値的に前例にならって発表するのが「ベターの中のベスト」。

筆者の理解では、百万石まつりは神事ではなくイベントで、そうであればこそ少しでも賑わったイメージで拡散されたい。当日の夕方のニュース番組で「金沢で百万石まつり、〇万人が歓声」と報じられるには、週明けにまとまる人流データでは遅く、スピーディーな集計のため従来と同じ方法を続けるということのようだ。

もっとも、アナログな集計方法のみに終始するわけではない。並行してデジタルな人流データも集めており、時間をかけて行う分析や検証のフェーズでは、そうしたデータも役立てたいという。

…でも、いったん「リセット」すべきか

実行委員会のスタンスと事情は理解した。しかし、納得できるかどうかは別の話だ。過去記事の通り、筆者はこれまで発表された観客数が実態と乖離していると捉えている。

友だちが自宅を訪れた時に「いま自宅に何人いる?」と聞かれて間違える人はいない。コンビニで「店内に何人?」と聞かれたら、誤差の範囲で答えられる。でも、スーパーマーケット、ショッピングモールと母数が大きくなると、肌感覚で把握しにくくなる。それが数万人の群衆になったら…。

目ではなく脳が観客数を弾き出しはしないか?

2022年の行列の様子

イベントなら、観客数は成否を決める大きな要素になる。今年は前田利家公役の仲村トオルさん、お松の方役の夏菜さんが石川県の縁者と強調され、仲村さんは能登半島地震で多額の義援金を寄せた。足元では各分野で「コロナ前超え」が言われ、コロナ前より低調だと「負け組」と認識されかねない。

この環境下で筆者がスタッフだったら公平に判断できず、無意識のうちに観客数を多く見積もってしまうと思う。モノサシに曖昧さを認めることは、そうした「手心」を生む危険性をもはらむ。

その繰り返しでつくられた直近の観客数が「30cm四方に観客1人の異常過密状態」なら、一度、デジタルもアナログも総動員して観客数を精査すべき。過去にも書いたが、現実離れした数字は観客を白けさせるばかりか、SNSを通じて悪い印象を流布させかねない。何か言われた時に根拠(らしきもの)を説明できないと。

で、翌年からはアナログな手法に頼るとしても「〇〇ビルから〇〇会館までの200m区間に前年比12%増の2,265人。他の区間は11%増、16%増。全体は13%増と仮定すると…」と、やったらどうか。速報性を保ったまま、今より正確に数字が出せるはず。

金沢市ホームページによると、市の推計人口は今年5月1日時点で45万6,356人。昨年の行列観客数は39万人。コロナ前の観客数は42万人。さて、今年の観客数はどこに「決まる」だろうか。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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