2023年6月2~4日に開かれた金沢百万石まつりで、メイン行事の「百万石行列」に39万人もの観客が押し寄せたらしい。
当サイトではこれまで「マンネリ行列」「変わり映えしない仮装パレード」とひたすら悪態をついてきたが、こんなに集客力があるとは(数字が本当ならば)恐れ入った。
※続報は以下のリンクから
どれぐらい混んだか、計算してみよう
地元新聞の記事によると、コースは全長が約3km(3,000m)。基本的に観客は道路の両側の歩道に陣取れるので、観客がいる区間は計6km(6,000m)と考えられる。
場所によって密度にムラはあるものだが、仮に奥行き5mにわたって観客が満遍なく詰めかけていたと仮定しよう。下手な図で申し訳ないが、下のような感じだ。
計30,000㎡の範囲に39万人の観客がいたことになるわけだ。
つまり、1人当たりの面積は769㎠ということ。これは28㎝四方に相当する。
みんな、思ったより肩幅が狭いんだな。筆者なんて靴のサイズが28㎝だから、もしも現地で観覧するなら、バッグを持たずに手ぶらで立ち、肩の関節を外し、足の位置を固定して数時間のパレードを見送らないといけない。
来年は将棋倒し対策が急務に?
もちろん、ホテルやオフィスなど建物の2階以上から見た人もいるはず。もしかしたら、空前の肩車ブームが起き、奇跡的に1人分のスペースに2人がいる状況が実現できたのかも知れない。
それでも、せいぜいが1人当たり30㎝四方や35㎝四方に緩和されるだけ。互いに体を預け合う状況は変わらず「将棋倒しにならなくて良かった」というレベルの混雑具合である。
当サイトでは以前の記事で、マンネリ化を抜け出すためのアイデアを書いた。しかし、こうまで混み合うなら、来年(2024年)以降はマンネリ化対策より、集客力が高過ぎるゆえの事故防止対策が急務かも知れない。
多すぎる数字を見ると、白ける
と、嫌味はここまで。
言いたいのは、あまりに現実離れした主催者発表の数字は、人々を白けさせるから注意してよ、ということ。
39万人って、東京ドーム7個を満員にできる人数だ。それが金沢駅~金沢城公園の3㎞区間にいたというのか。
2022年、大都市・名古屋に近い岐阜市で、木村拓哉、伊藤英明という幅広い世代に知られる俳優が参加した武者行列は、観客が46万人だったという。人口45万人の地方都市・金沢で、失礼ながら若年層は聞き覚えのない俳優が出て39万人というのは、ちょっと考えにくい。
地元新聞では先日から、山の中の相撲場であった高校生の大会に1万人が来たとか、芸能イベントに県民だけで100万人を参加させるとかいった見出しや文章が躍っている。「数は力」とばかりに並べられる言葉には、どうにも古くさい印象が漂う。
そもそも人口が減る現代において「多いから勝ち」「大きいから優れている」とは認識されなくなってきている。そんな時代に、にわかには信じられない巨大な数字が主催者発表で出てくると、情報の受け手は温度差をさらに大きく感じ、興醒めする。
そして、そうした違和感は一瞬で拡散される。実力や成功ぶりを誇示しようと発した言葉が、かえって自分の首を絞めるとは、何とも皮肉なものである。