北陸新幹線が敦賀まで延伸する2024年春、白山市の白山総合車両所に隣接した複合施設「白山市立高速鉄道ビジターセンター」もまたオープンする。
…あれ?
…「高速鉄道」???
新幹線の車両基地に隣り合い、新幹線技術を紹介するのが目玉の場所なのに「新幹線」の文言はどこへ行ったの?
というわけで、ネーミングの謎を取材した。
そもそも「ビジターセンター」とは
まず「ビジターセンター」とは何か。
白山市ホームページによると、1万3,404㎡の敷地に、鉄骨造5階建て、延べ床面積3,959㎡の施設を建てる。主な機能は観光情報や物品販売で、鉄道に関する展示を行うほか、屋内遊具施設も設ける。展望室も設ける。
設置の目的は「白山総合車両所の紹介や新幹線技術のPR並びに観光案内・物販、屋内遊具施設を備えた複合施設を整備し、他の観光施設とも連携しながら白山市・能美市・野々市市・川北町の観光振興を図る」ということらしい。
場所は白山総合車両所の南西側で、細い道を隔てて車両所と隣り合っている。
名称は「新幹線」を付ける案も
「名称に『新幹線』を付けようという話もあった」。白山市企画振興部白山総合車両所等活用対策室の担当者が語る。そりゃ、そうだろう。「新幹線ありき」の施設なんだから。
でも、その通りの名称にならなかったのは「権利関係の問題から」だという。
いわく「新幹線」という言葉はJRグループ各社が商標登録している。日常会話では問題なく使えるが、こと商品にする際は「許諾」が必要となる。新幹線をかたどるTシャツや菓子に「JR西日本許諾済み」などと書いてあるのが、それだ。
営業行為が発生する場では…
いくらビジターセンターが公共的な施設であると言っても、物販機能もあり、営業行為が発生する。もちろん、勝手に「新幹線」と名乗るわけにはいかない。
それなら、プラモデルやDVDなどと同じように許諾を得れば良いように思うが、意外に大変らしい。それは「難しい」というレベルではなく、担当者は「許諾を受けられる見込みがなかったと聞いている」と説明していた。
その口ぶりから推察するに、北陸新幹線の車両「W7系」をモチーフに商品を作るならJR西日本がGOサインを出せば良いが、こと「新幹線」となると、JR東日本やJR東海も絡む。全社が首を縦に振るのは事実上不可能ということだろう。
「新幹線」の定義に立ち返る
施設名に「新幹線」と付けられない中、頼ったのは新幹線の定義だ。
全国新幹線鉄道整備法によると、新幹線というのは「その主たる区間を列車が200km/h以上の高速度で走行できる幹線鉄道」を指す。
なるほど。「高速度で走行できる幹線鉄道」。略して「高速鉄道」だ!というわけで、正式な施設名の案が「白山市立高速鉄道ビジターセンター」になったらしい。
このまま終われない!愛称を公募へ
ところが、何だか煮え切らない名付けのまま、おずおずと引き下がる白山市ではない。
「むしろ、これから決まる愛称をもって親しんでもらいたい」。そう、今後、正式名称とともに(それ以上に)広告塔となるようなニックネームを公募するという。
いま思うと、硬くて長い正式名称は、これから奏功するかも知れない。
例えば「石川県立図書館」「金沢港クルーズターミナル」は「そのものズバリ」で分かりやすい正式名称がある。一方で提唱された愛称は「百万石ナントカ」と古くさい響きで分かりにくいため定着していないからだ。
オープン時期も工夫しちゃう!
当サイトでは2022年5月2日アップの記事で、北陸新幹線の敦賀延伸日が2024年3月16日だと予想した。そして、敦賀延伸と同日にビジターセンターを開業したら、より大きな話題の前に埋もれることになるため、開業日を前倒しする可能性があると指摘した。
それから1年。白山市によると、この「白山市立高速鉄道ビジターセンター」は敦賀延伸の少し前にオープンさせる方針になったらしい。それが良いと思う。
例えば敦賀延伸の2日前に開業するとしたら、新聞なら「きょうビジターセンター開業」「ビジターセンターがオープンした」「きょう敦賀延伸」「敦賀へつながった」と4日連続で1面に記事が載ることになる。
こうした少しずつの工夫が、機運の盛り上げや認知度の向上につながる。さて、筆者も、ない頭をひねって愛称を考えてみようかな。