「白山市立高速鉄道ビジターセンター」24年春開業へ/あれ?「新幹線」は?/苦渋の名付け背景を訊く

「白山市立高速鉄道ビジターセンター」24年春開業へ/あれ?「新幹線」は?/苦渋の名付け背景を訊く

北陸新幹線が敦賀まで延伸する2024年春、白山市の白山総合車両所に隣接した複合施設「白山市立高速鉄道ビジターセンター」もまたオープンする。

…あれ?

…「高速鉄道」???

新幹線の車両基地に隣り合い、新幹線技術を紹介するのが目玉の場所なのに「新幹線」の文言はどこへ行ったの?

というわけで、ネーミングの謎を取材した。

「白山市立高速鉄道ビジターセンター」の建設地(2023年6月9日撮影)

そもそも「ビジターセンター」とは

まず「ビジターセンター」とは何か。

白山市ホームページによると、1万3,404㎡の敷地に、鉄骨造5階建て、延べ床面積3,959㎡の施設を建てる。主な機能は観光情報や物品販売で、鉄道に関する展示を行うほか、屋内遊具施設も設ける。展望室も設ける。

設置の目的は「白山総合車両所の紹介や新幹線技術のPR並びに観光案内・物販、屋内遊具施設を備えた複合施設を整備し、他の観光施設とも連携しながら白山市・能美市・野々市市・川北町の観光振興を図る」ということらしい。

場所は白山総合車両所の南西側で、細い道を隔てて車両所と隣り合っている。

名称は「新幹線」を付ける案も

「名称に『新幹線』を付けようという話もあった」。白山市企画振興部白山総合車両所等活用対策室の担当者が語る。そりゃ、そうだろう。「新幹線ありき」の施設なんだから。

でも、その通りの名称にならなかったのは「権利関係の問題から」だという。

いわく「新幹線」という言葉はJRグループ各社が商標登録している。日常会話では問題なく使えるが、こと商品にする際は「許諾」が必要となる。新幹線をかたどるTシャツや菓子に「JR西日本許諾済み」などと書いてあるのが、それだ。

営業行為が発生する場では…

いくらビジターセンターが公共的な施設であると言っても、物販機能もあり、営業行為が発生する。もちろん、勝手に「新幹線」と名乗るわけにはいかない。

それなら、プラモデルやDVDなどと同じように許諾を得れば良いように思うが、意外に大変らしい。それは「難しい」というレベルではなく、担当者は「許諾を受けられる見込みがなかったと聞いている」と説明していた。

その口ぶりから推察するに、北陸新幹線の車両「W7系」をモチーフに商品を作るならJR西日本がGOサインを出せば良いが、こと「新幹線」となると、JR東日本やJR東海も絡む。全社が首を縦に振るのは事実上不可能ということだろう。

「新幹線」の定義に立ち返る

施設名に「新幹線」と付けられない中、頼ったのは新幹線の定義だ。

全国新幹線鉄道整備法によると、新幹線というのは「その主たる区間を列車が200km/h以上の高速度で走行できる幹線鉄道」を指す。

なるほど。「高速度で走行できる幹線鉄道」。略して「高速鉄道」だ!というわけで、正式な施設名の案が「白山市立高速鉄道ビジターセンター」になったらしい。

このまま終われない!愛称を公募へ

ところが、何だか煮え切らない名付けのまま、おずおずと引き下がる白山市ではない。

「むしろ、これから決まる愛称をもって親しんでもらいたい」。そう、今後、正式名称とともに(それ以上に)広告塔となるようなニックネームを公募するという。

いま思うと、硬くて長い正式名称は、これから奏功するかも知れない。

例えば「石川県立図書館」「金沢港クルーズターミナル」は「そのものズバリ」で分かりやすい正式名称がある。一方で提唱された愛称は「百万石ナントカ」と古くさい響きで分かりにくいため定着していないからだ。

オープン時期も工夫しちゃう!

当サイトでは2022年5月2日アップの記事で、北陸新幹線の敦賀延伸日が2024年3月16日だと予想した。そして、敦賀延伸と同日にビジターセンターを開業したら、より大きな話題の前に埋もれることになるため、開業日を前倒しする可能性があると指摘した。

【独自】北陸新幹線白山総合車両所のビジターセンターは23年末に完成/敦賀延伸と同時開業?

北陸新幹線車両を保守点検する白山総合車両所に隣接して設けられる「(仮称)白山総合…
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それから1年。白山市によると、この「白山市立高速鉄道ビジターセンター」は敦賀延伸の少し前にオープンさせる方針になったらしい。それが良いと思う。

例えば敦賀延伸の2日前に開業するとしたら、新聞なら「きょうビジターセンター開業」「ビジターセンターがオープンした」「きょう敦賀延伸」「敦賀へつながった」と4日連続で1面に記事が載ることになる。

こうした少しずつの工夫が、機運の盛り上げや認知度の向上につながる。さて、筆者も、ない頭をひねって愛称を考えてみようかな。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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