北陸新幹線敦賀延伸まで、あと9カ月。聞くと、昔は「東京発敦賀行き」という列車があり、オールドファンには東京駅で行き先表示に「敦賀」と出るのが待ち遠しいらしい。
ところで、このビッグイベントを、石川県はずっと「北陸新幹線県内全線開業」と称してPRしてきた。筆者から見ると、どうにも恥ずかしい呼称だが、みなさんはどうだろう?
能登の人、金沢の人はどう感じてる?
新幹線は遠くの都市と都市を結び、速く便利で気軽に移動できるのが最大のメリット。北陸新幹線は敦賀まで延びることで関西・中京方面への所要時間が短縮され、その時短効果に魅力を感じた観光客が増える可能性がある。
一方、乗り換えが必要になることは心理的にネガティブな効果があり、その影響がどのぐらいなのか懸念される。
もちろん、石川県民の税金を使ってPRするなら、県民にとっての意味を前面に出して良い。それにしても、妥当なのが「県内全線開業」なのだろうか、という話。
能登の人は小松・加賀へ新幹線が通ることに期待を持つか? 金沢の人は小松・加賀に新幹線が通ることを自分ゴトと感じるか?むしろ「敦賀で乗り換えが必要になる」「でも時間は短くなる」「お客さんは増えるかな」と敦賀まで延びる影響を考えるのではないか?
南加賀地方にとって一大事なのは分かる。
でも、上述の通り、多くの県民にとって2024年春は新幹線が小松駅、加賀温泉駅を通ることより、敦賀まで延びることに意味がある。よって「県内全線開業」は、あまりに視野が狭く、せっかくのイベントを矮小化しているように思える。
2015年の長野県はどうだったか
ここで、2015年3月の「北陸新幹線金沢開業」を前にした長野県のPRを確認してみよう。この時、長野県は飯山駅に新たに新幹線が通ることになったのみならず、それまで「長野新幹線」と呼んでいた新幹線が「北陸新幹線」に変更された。
そうなると「北陸新幹線長野県内全線開業」と表記していたのだろうか。
同年1月のプレスリリースを見よう。
「北陸新幹線(長野経由)金沢延伸開業」。長野県内の全ての区間が完成することより、金沢までレールが伸びることを重く捉えている。新幹線だし、それが自然だろう。
高いプライド、まず内向き発想を捨てて
先日、同世代の経営者と話したら、石川県と私立大学が結託し、就職する学生を県内に縛り付ける悪だくみに「若者が飛躍する機会を奪う」と危機感を持っていた。
地理的・時間的に狭く捉えた自らの領域にこもり、排他的になる思考は、どんどん自らの地位を貶めると思う。
例えば「俺はガキの頃、地元で一番ケンカが強かったんだ!」と自慢する大人を好ましいと思うだろうか?「俺らは将軍の次に石高が多かった!加賀百万石だ!」と連呼するのも似たようなもの。
敦賀に新幹線が至るということは、おそらく歴史上最初で最後に、北陸3県を新幹線が貫くということ。その最大の意義をストレートに解釈せず、了見の狭いキャッチフレーズに終着しているようで、なんだか悲しい。