ドラッグストアのゲンキー(坂井市)が珍しいプレスリリースを出した。タイトルは
「年賀状廃止のお知らせ」
である。
プレスリリースは以下のリンクから。
http://www.genky.co.jp/files/topics/temp/002160.pdf
デジタルへの移行を推進し、環境意識の高まりを考慮したところ、2022年用の年賀状から送付するのを止めたらしい。今回のプレスリリースはほとんどこれだけの、あまりに簡素な内容だ。
小売企業は多くの取引業者と接している。最近のドラッグストアは医薬品や生活雑貨、食品など多様な商品を扱っており、それらの商品にはそれぞれメーカーや卸業者がいる。1円ずつ利益を積み重ねるドラッグストアにとって、数百枚、数千枚の年賀状をつくるコストも馬鹿にはできないだろう。
年賀状発行、ピークの03年から6割減
年賀はがきの発行枚数はピークだった2003年が44億5936万枚。それに対し、2021年の当初枚数は18億2536万枚。もちろん追加発行の可能性もあるが、現状ではピーク時から6割減の水準まで落ち込んでしまった。
もはや年賀状は年末年始に欠かせない文化とも言えなくなってきた。筆者も含め、特に若い世代では1枚すら出さない人も多いのではないか。
こうして年賀状文化自体が下火になる中、ゲンキーはデジタル化、環境配慮の観点に加え、コスト面も加味して廃止を決めたとみられる。
上質紙から生活用紙へ、設備を更新
中越パルプ工業(高岡市)は2022年9月、高岡工場で、上質紙や情報用紙の生産設備を停止する。
プレスリリースによると、停止する機械は生産能力が1日当たり255トン(年9万トンほどの計算)。
同社によると、紙の需要は電子媒体へのシフトなどで漸減傾向にあり、コロナ禍ではテレワークも進んで「紙全般の需要減少は歯止めがかからない状況」という。紙メーカーが言うと、リアリティーがすごい。
一方、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの生活用紙は、衛生意識の高まりから家庭向けが安定し、今後、業務用を回復を見込めるという。そこで、生活用紙の生産機械を新たに導入する。
生産開始は23年12月で、生産能力は年2万2000トンとなる。
利益は25年前の7分の1に
ここで同社の過去の業績を調べてみた。過去最高の売上高は2001年3月期の1157億円。つまり20年前。最高益はさらに5年前の1996年3月期である。
一方、今期(22年3月期)の予想は売上高が850億円で、営業利益が16億円、純利益が7億円。過去最高益は営業利益が110億円で純利益が45億円だから、利益は四半世紀前の7分の1ぐらいになっている。
同社はセルロースナノファイバーの開発など新規事業にも取り組んでいるが、そうした事業の伸びを遥かに上回るペースで紙事業が落ち込んでいる。
今回停止する機械で作っていた上質紙や情報用紙には、おそらく付加価値の高い製品も含まれていたことだろう。それらを止め、いかにも価格競争に巻き込まれそうな生活用紙を作らざるを得ない状況……売上高の低下ぶりよりも利益の低下ぶりが大きく、利益率が悪化している近年の業績推移を象徴する出来事のように見える。
プレスリリースは以下のリンクから。