金沢駅兼六園口(東口)のホテル金沢を経営するサイトリ細胞研究所(東京)は2023年7月28日、ホテルの経営体制を刷新する。所有機能と運営機能を分離することで、経営の効率化を図るらしい。
※この記事では、会社と施設を分かりやすく区別するため、施設を指す場合は基本的に「ホテル」とのみ表記します
※続報は以下のリンクから
サイトリ細胞研究所によると、まず、今ある「ホテルKANAZAWA合同会社」を消滅させ、それを今ある「ホテル金沢株式会社」が吸収して存続する。そして、新たに「株式会社ホテル金沢」をつくり、そこにホテルの運営業務を移管する。
……全て〝ホテルカナザワ〟……異常にややこしいので、親切丁寧がモットーの筆者は下の図にまとめてみた。
図って、すごく便利だ。テクニカルな話は置いておいて、ざっくり言うと、ホテルの所有と運営を別ラインに分けて経営する、ということ。その過程で会社を消滅させたり新設したりするわけだ。
なぜ、こんなことをするのか。担当者は「経営の効率化のため」と説明した。
「ホテルは所有・運営し続ける」???
しかし、素人目には、経営効率化のために所有と運営を別会社に分ける理屈に納得できない。
思えば、当サイトはちょうど1年前に公開した記事で、サイトリ細胞研究所がホテルを売却する方針だと報じた。疑い深い筆者は、所有と運営を別ラインに分け、いずれか一方だけでも切り離しやすくする狙いがあるのではないか、と深読み。そう尋ねたら、驚きの回答を得た。
「確かに1年前、ホテル金沢を売却すると説明したのですが、それは当時の担当者による誤りでした。すみません。将来は分かりませんが、現状はホテルを所有し続けるし、運営し続ける方針です」
……………ん? 1年たって、今ごろ言う?
当サイトでは1年前の記事を筆頭に、何本かの記事でホテル金沢の売却方針に触れてきた。今さら逃げるように記事を消すのも変なので、該当記事に赤色で追記した。
でも、本当に所有・運営し続けるのか
ここで筆を置いたら、プレスリリースを右から左にコピペするだけのマスコミと同じ。読者の皆さんと一緒に、もう少し考えてみよう。
サイトリ細胞研究所は旧社名「FRACTALE」時代の2019年9月27日、連結子会社の「ホテル KANAZAWA 合同会社」を通じて「ホテル金沢株式会社」を100%子会社化し、ホテルの所有・運営を始めた。金沢でのホテル事業は、これが初めてだった。
しかし、コロナ前からの全社的な赤字経営が続く中、不動産事業から早期に完全撤退し、経営資源をメディカル分野に集中させる計画を打ち出す。そして、2022年7月には今後の注力分野にちなんで社名をサイトリ細胞研究所に変更した。いかにも医療系の社名である。
この流れで「ホテル金沢だけは別」と言われても……。
根拠なく疑っているわけではない。実際、筆者の知り合いには「ホテルの運営委託について、うちに打診があったらしい」と証言する人までいるからだ(それとて誤情報の可能性もゼロではないが)。
1年前の説明は本当に「誤り」だったのか? いったん売却先や運営委託先を探したものの、コロナ禍で難航したため方針を切り替えたと想像できなくもない。
もちろん、大前提として、筆者はホテルが問題なく営業を続けることを願っている。ただ、今回の経営体制の刷新が、どうも来たる大きな動きへの伏線のように思えてならないのだ。