みずほフィナンシャルグループ(FG)は坂井辰史社長(金沢市出身)が辞任する方向で調整に入った。筆者は短時間だが坂井氏を取材したことがあるだけに「無念だろうなあ…」と同情している。
辞任の主な理由は2021年に入り8度を数えるシステム障害とされる。これを基に金融庁が同FG、みずほ銀行に業務改善命令を出す準備をしており、さらに、海外送金のシステム障害時に、外為法違反の疑いがある送金手続きをしていたことも判明。トップの坂井氏が引責辞任することになった。
金沢・十一屋小学校で過ごした少年時代
坂井氏は東大卒後に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に投資銀行業務や企画部門に従事し、みずほFG執行役常務などを経て、2016年4月、みずほ証券社長。18年4月に、みずほFG社長に就任した。
父は白山市、母は金沢市の出身で、坂井氏自身は小学校時代を金沢市十一屋小学校で過ごしたらしい。
取材したのは、みずほFG社長に就任する前だった。
金沢の話を振ると「久々に来たら随分と変わっていて、でもきれいな街並みは、あの頃から変わっていない」と、後にメガバンクを含む総合金融グループのトップに就く人とは思えない、良い意味で「普通」のことを話していたのを覚えている。
メガバンクのトップというと、ドラマ「半沢直樹」のナカノワタリ頭取(北大路欣也)のように威厳たっぷりで近寄りがたい人を勝手にイメージしていた。そのため、しばらく後に坂井氏がFG社長に抜擢されたとの報道に接し、失礼ながら「へえ、あの人がねえ」と思ってしまった。
「サグラダファミリア」完成は遠く?
そもそも、みずほ銀行は旧「第一勧業銀行」、旧「富士銀行」、旧「日本興業銀行」の3行が2002年4月に経営統合して発足した。翌03年にFGができた。
筆者が東京で大学時代を過ごしていた10年以上前、みずほ銀行では、よく「システム更新のため〇~〇日はATMを休止する」という案内が掲示されていた。大学生ながらに「統合がうまくいってないんだろうなあ」と思っていた。
このシステム、いつまでも完成しないことから「システム界のサグラダファミリア」とも呼ばれているぐらいだ。
今年に入って8回もシステム障害が起き、もともとの収益力の弱さも相まって、株価の面ではライバルの三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループに水を開けられている。
こうした環境下で3年半、グループを率いてきた坂井氏。今回のシステムトラブルを見る限り、在任期間を通じ、本業以外にも多くの時間や手間をとられたのだろうと推察する。
地元が同じで、みずほユーザーとしてトラブルの直接的な影響を受けた北陸人は少ないだろうことからも、どうしても贔屓目に、同情的に見てしまう。まだ在任期間の残りはあり、苦悩の日々は続くだろうが、ひとまずはお疲れ様でした、と言いたい。