「社長」がいない会社もある/法定の役職と呼称は違う/「代表取締役だが肩書き未定」という記事は奇妙

「社長」がいない会社もある/法定の役職と呼称は違う/「代表取締役だが肩書き未定」という記事は奇妙

11月2日の地方紙に奇妙な記事が載っていた。要約すると

代表取締役社長が取締役を退き、代わりに相談役が代表取締役に復帰。肩書きは現時点で未定

という内容。読んでみて、全く理解できず唖然としてしまった。

法律上、株式会社の役員は「取締役」「監査役」「会計参与」の3種類(委員会設置会社の場合は「執行役」という役職もある)。このうち、会社法では企業の最高責任者を「代表取締役」とする。

つまり「代表取締役」に就くことは、対外的に「経営陣の中でもトップ」と示すことに他ならない。社会人の常識だ。そんな立派な「肩書き」を持っている人に「肩書きは未定」とは、どういう了見だろう?

会長や社長、専務は単なる通称・呼称

きっと、記事を書いた人やチェックした人は「会長」「社長」「専務」みたいな呼称が最重要だと誤解している。「あれ?『代表取締役○長』にならなきゃいけないのに『○長』が決まっていない!これは不完全だ!肩書きは未定だ!」という思考だろう。

ただ、会長や社長、専務なんて、法律に定めのない通称・呼称に過ぎない。

もちろん、対外的に取締役の中での序列を示す効果はある。「会長」は一線を退いた印象がある一方で「社長」は現役感が漂う。「専務」「常務」は平取締役より格上なことを表現する。

でも、上記のように、代表取締役という肩書きこそが重要であって「社長」はオマケ。だから、代表取締役と取締役しかおらず、社内に「社長」と付く人がいない企業も少なくない(それでも、便宜上「社長」と呼ばれていることも多い)。

常務より格上の営業課長??

逆に、筆者が実際に見た中で最も驚いたのは「代表取締役社長兼総務部長」。理屈の上は「代表取締役営業課長」も可能で、たとえば隣に「常務取締役」がいたら「営業課長」と「常務」なのに、会社を代表する権限を持つ営業課長が格上になる。

それに「会長」と名乗っていても、いまだ絶対的なトップに君臨する人も多い。新聞社の人は心当たりがあるかも知れない。このように、法定の役職以外は会社によって重みの異なる、いい加減なものだ。


今回の事例も、際立っているのは、かなり高齢の相談役が代表取締役に返り咲く異常さ。その正確な背景と今さらながらの将来の展望こそが焦点で、記事化すべき対象のはず。

なぜなら、どう転ぼうとも前相談役が実質的トップになるだろうから、その呼び名が会長か社長か、また傀儡の外部人材を連れてくるかどうか、なんて些末な問題に過ぎないからだ。

先日の「みやびの宿 加賀百万石」の記者会見で、報道関係者は新社長を謝罪させ、追及するのに血眼だった。しかし、入社したばかりで不正とは無関係の新社長を謝らせるより、今後のビジョンを聞く方がよほど適当だと筆者は思い、すぐにインタビューした。

表面的な「木」ばかり見て「森(=本質、全体像)」が見えない事態は避けたい、と思う。

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国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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