【独自】「ダム貯水率66%」で小池都知事が節水を呼び掛けたので、石川県・手取川ダムを調べると、45%だった

【独自】「ダム貯水率66%」で小池都知事が節水を呼び掛けたので、石川県・手取川ダムを調べると、45%だった

2023年8月21日

今年(2023年)の夏は暑く雨が少ない。23年8月18日、小池百合子東京都知事が首都圏のダムの水位低下を受けて節水への協力を呼び掛けていたので、当サイトが北陸の状況を調べたみたら、石川県内最大の手取川ダム(白山市)の貯水率は首都圏の平均値より低かった。

まとめページは以下のリンクから

【まとめ】2023年夏、少雨で手取川ダムの水位が低下/なのに一切話題にならない不思議

2023年夏は少雨と猛暑の合わせ技により、石川県内最大のダム「手取川ダム」の水位…
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県のホームページによると、県内には12のダムがある(県か国が管轄しているダムのことだろう)。このうち手取川ダムの貯水率は、ウェブサイト「石川県防災ポータル」によると、45.1%(8月21日20時20分時点)となっている。

北陸地方整備局のホームページによると、手取川ダムからは七尾市能登島~加賀市の9市4町に水が供給され、給水人口にして石川県内の7割以上をまかなっているらしい。

21日午後16時ごろ、現地を訪れてみた。iPhoneのパノラマ撮影を活用したダムの写真は以下の通り。筆者の過去の取材経験では、壁面のうちアスファルトが剥き出しの部分と樹木が生い茂る部分の境界線が、水が最も多い時に到達するライン。

手取川ダム(2023年8月21日撮影)

大雑把な目視でも、確かに貯水率は半分を切っているようだ。

首都圏最大のダムは貯水率36%

NHKによる2023年8月18日の報道によると、同日時点で首都圏に水を供給している利根川水系の関東北部にある9つのダムの貯水量は平均66%となっていた。このうち、最も容量の大きい矢木沢ダム(群馬県)の貯水率は36%で、9つのダムで最も低かった。

東京都水道局が公開している情報では、8月21日時点の矢木沢ダムの貯水率は36.9%で、ちょっと増えたようだ。

こうして比べると、手取川ダムの貯水率は関東の平均より低く、むしろ矢木沢ダムに近い水準にある。

石川県内では現状、あまりダムの水量が話題になっていないように思う。素人目にも、すぐにどうこうなる感じではなさそうだが、小池都知事の発言から類推する限り、今後の気象条件によっては石川県も楽観視できないのかもしれない。

降水量は平年並みも、積雪少なく気温高く

さて、気象庁によると、手取川ダムから直線距離で15㎞ほど下流にある調査地点「白山河内」では2023年、夏場の降水量は平年(1991~2020年)並みであるものの、気温が平年より高く、冬場の積雪が少なかった。

降水量(mm)2023年平年(1991~2020年)
6月269.0208.7
7月258.5290.8
8月224.4
出典・気象庁

2023年8月は途中なので月間データがないが、6、7月の合計で見れば、2023年も平年もさほど変わらない。

手取川ダム(2023年8月21日撮影)

一方、平均気温と降雪の深さは以下の表の通り。

気温(℃)2023年平年(1991~2020年)
6月21.120.2
7月25.924.1
8月25.2
出典・気象庁
降雪の深さ(cm、合計)2023年平年(1991~2020年)
1月174217
2月128155
出典・気象庁

2023年の夏は小松市で気温40℃を記録する猛暑となっている。理科の知識が乏しい筆者でも、降雪があまりなければ雪解け水は少なくなるし、気温の高さは蒸発する水の量を増やすことは容易に想像できる。

2012年、能登町でダム枯渇の危機を経験

筆者には地方新聞で働いていた2012年、奥能登の能登町で「寺田川ダム」という旧能都町エリアの水源となるダムが枯渇する危機に触れ、たくさん取材・執筆した経験がある。

当時、米のとぎ汁で植木に水をあげたり、雨乞いの太鼓を打ち鳴らしたりと、あの手この手で水不足を回避しようという取り組みが住民総出で行われた。

一方、ホームセンターから貯水用のポリタンクが消えた。飲み水がなくなるだけなら買えば良いが、風呂やトイレで使う水がなくなるかも知れないからだ。東京のテレビ局までがわざわざ能登半島まで来て中継していたぐらい、全国的な騒ぎになった。

筆者が人事異動した後に発覚した原因は、雨が少ないのにダムから水を放出し続けたことや水道管の老朽化が進んで地中で水漏れしていたことなど、複数あったと記憶している。それはそれとして、「生活水がない」というのがこんなに大変なことなのか、と実感した。

もうすぐ9月。大きな事態に発展しないことを願う。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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