※2023年11月25日昼に、ゴーゴーカレーグループによる反応を、末尾に赤字で追記しました。
「ゴーゴーカレーによる株式の大量買い付けはインサイダー取引の可能性あり!」
日本製麻(本店・砺波市)は2023年11月22日、同社の大株主であるゴーゴーカレーグループ(金沢市)に浮上した疑惑について調べていた特別調査委員会が、冒頭の趣旨の報告書をまとめたと発表した。
※公表資料では「X社」「対象取締役」と記述しているが、指す対象が明らかなので、この記事では実名で書く。まとめページは以下のリンクから。
目次
結論:2つの点で該当の可能性あり
先に結論を書くと、特別調査委員会はゴーゴーカレーによる日本製麻株の買い集めについて、2つの点から「インサイダー取引の構成要件に該当する可能性がある」とまとめた。
それでは、以下で過去の経緯と結論に至る理由をなるべくコンパクトにまとめる。
経緯:ゴーゴーが日本製麻に社長を送り込んだが解職された
ざっくりと経緯を説明すると、ゴーゴーカレーは日本製麻の株を買い集め、ゴーゴーカレー創業者の宮森宏和氏は2023年3月、ゴーゴーカレーの社長から会長に退くとともに、日本製麻の社長に就いた。
ところが、半年も経たない8月21日の取締役会では宮森氏の解職が決議され、宮森氏はヒラ取締役となった。
この間にゴーゴーカレーが日本製麻株を買い増した行為は「インサイダー取引に当たるのではないか?」ということで、日本製麻が弁護士2人と公認会計士1人からなる特別調査委員会を設置し、2023年8月29日から11月22日にかけて資料収集や関係者へのヒアリングを進めた。
調査対象:23年7月3日~8月21日の買い集め
調査の対象は2023年7月3日から8月21日にかけての株式取得。インサイダー取引に関して規定する金融商品取引法にいう「重要事実」に当たる可能性があるものとして、報告書は2点を挙げた。
①宮森氏を社長から解職した8月21日の取締役会決議
②2023年4~6月期の業績が前年同期比で大きく上振れしていた。それは8月10日公表の決算短信、8月14日公表の四半期報告書に書かれていた
端的に言えば「宮森氏はゴーゴーカレーの会長であり、日本製麻の社長でもあったわけで、日本製麻に関する未公表の情報を基に、ゴーゴーカレーによる株式買い増しに加担したんじゃないの?特に上の2点が決定的な事実だぞ」という感じか。
ゴーゴー側:7月に株式取得を再開も「宮森氏の指示なし」
報告書によると、ゴーゴーカレーは株式市場で日本製麻株を継続的に買い付けてきたが、2023年春に中断。7月になって再開し、3日に元役員から市場外で買ったほか、20日~8月21日には市場で日本製麻株を取得した。
この行為について、ゴーゴーカレー側による説明の趣旨は以下の通り。
2020年ごろの時点で日本製麻株を保有割合20%未満の範囲で買い付けるコンセンサスがあった。それに基づき、ゴーゴーカレー管理本部の判断で取得した。宮森氏の指示は受けていない。
報告書:宮森氏による指示あった「可能性が高い」
一方、報告書はゴーゴーカレー側の言い分に疑問を呈した。嚙み砕くと、おおむね以下ような内容だ。
春までは「日本製麻の経営権を得る」目的の下、管理本部主導で買ったと言われれば頷ける。でも、宮森氏が3月に日本製麻に入り、目的は達成された。だから、2月を最後に7月までは株式を追加取得していない。
そもそも、宮森氏はゴーゴーカレーの創業者・支配株主・会長で、実質的経営者と言える「可能性が高い」。そんな疑惑を持たれやすい状況なのに、億単位の株取引を宮森氏に相談せず勝手にするとは「到底考えにくい」。宮森氏の指示を受けた「可能性が高い」。
実は、日本製麻の社内では7月ごろに監査等委員会から取締役会議長を交代するよう求める議案が出るなど、宮森氏の立場が揺らいでいた。その中で20日から買い集めを再開したのは支配体制の維持強化が狙いで、宮森氏の指示があった「可能性が高い」。
社長を解職される8月21日には88,000株を買っている。これは1日分の買い付け数として格段に多い。取引後半になるにつれて株価度外視で買っているフシがあり、宮森氏の指示の「可能性が高い」。
筆者個人の受け止め方としては「宮森氏の指示があった」とやや強引に結論付けていると感じる箇所がないわけではないのだが、皆さんはどう読まれただろうか。
ともあれ、報告書は宮森氏が未公表の重要事実を把握しながらゴーゴーカレーを通じて株取引を指示し、実行させた可能性が高いほか、自身の社長解職の件もあらかじめ「ゴーゴーカレー管理本部長兼日本製麻での秘書」たる人物に伝えたている可能性があるとして「インサイダー取引に該当する可能性がある」と結んだ。
ゴーゴー:第三者委員会の新設と再調査を
これに対し、ゴーゴーカレーは以下の趣旨で反論し、第三者委員会の新設と再調査を求める旨を書面で公表した。
◆特別委は独⽴性・中⽴性がない
⇒⽇本製⿇の特別委の構成委員は3名のうち2名が、宮森氏解職の適法性を主張する渡邉雅之取締役と佐々⽊健郎取締役なので、特別委の独⽴性・中⽴性がない。
◆調査⼿法の不合理性
⇒宮森氏らゴーゴーカレー側の度重なる要請に反し、特別委は宮森氏を解職した取締役会の録画データを調べず、提供してくれない。データを確認されると不都合な事情があるのではないか。
ゴーゴーカレー、やっと日本製麻の経営権を掌握したら社長を解任されてインサイダー取引の疑いで報告書を公表され、一方で新サッカー場「金沢スタジアム」の命名権を得た途端に、そこを本拠地とする予定のツエーゲン金沢のJ3陥落が決まる……なんだか散々な状況である。