【株式入門】初心者向け「楽しむ目的の小遣い投資」の始め方・心得をまとめてみた

【株式入門】初心者向け「楽しむ目的の小遣い投資」の始め方・心得をまとめてみた

株式投資の未経験者に向け、始め方と基本的な心得をまとめてみる。

日経平均株価の史上最高値更新、新NISAスタートで投資に注目が集まっている。私は会社員時代に投資を始め、脱サラ直後は配当金や売却益のおかげで何とか生活できた。たまに利益確定と買い増しを繰り返していて、金額は秘密だけど、現在は元手の2倍ぐらいを運用している。

昔、友人に以下の内容を伝えたら好評を得た。今回は投資初心者の私の妻に「小遣い株式投資」を勧めたタイミングで、まだ投資を始めてないけど興味がある方に向け、なるべく理論や投資家名を出さず平易に書いてみる。

投資目的をはっきりさせる

最初に投資の目的をはっきりさせる。たとえば

① 投資で得た収益だけで生活できるようになりたい

② インフレや物価高の対策として金融資産を分散させたい

③ 労力の小さい片手間の投資で小遣いを得たい

など。目的次第でとるべき方法は変わるからだ。

たとえば、元手が少ないのに①を目指すなら、相応のリスクを背負って勝負しないといけない。②なら「投資先は株式だけで良いか?」ということに。今回は初心者向けなので③を意識して話を進める。

ちなみに、看護師である私の妻は、学生時代から専門科目が多く経済社会に関する知識を蓄える機会が少なかったよう。我が家の場合は③に加えて

④ 社会や経済の仕組みに理解を深める

という目的もある。後述するが、たとえ少額でも株主になるということは当事者として会社に関与することであり、だからこそ見えてくるものが多く、これがバカにできないメリットになる。

ネット証券で無料の口座を開く

次は証券会社に口座を開く。世の中にはたくさん証券会社があるが、基本はインターネット専業の証券会社を選ぶ。ほとんどのサービスを無料で利用できるからだ。

たとえばSBI証券や楽天証券。個人的な受け止めとしては

●SBI証券…ネット最大手で、扱っている銘柄は多いが、取引画面が見にくい。メンテナンスが多い

●楽天証券…取引画面は見やすいし、操作もしやすいが、扱っている銘柄がSBIより少ない

感じ。まあ、両社とも、マイクロソフトやアップルなどアメリカの主要企業を含め、よく知られた会社は問題なく買えるという点では大差ない。

口座開設の手続きはネットからできる。証券口座との入出金に使うため、SBI証券なら住信SBIネット銀行、楽天証券なら楽天銀行に預金口座を開く。

1株から買える

日本企業の株式って、基本は100株単位で売買するので、1社当たり数万~数十万円の資金が必要になる。でも、最近は1株から購入できるサービスが拡大されていて、上記のSBIや楽天でも利用できる。

たとえば、NTTは1株180円ほど。ENEOSは700円ほど。ハードルは意外に低い。毎日の缶コーヒー習慣を止め、毎日NTT1株を買ってはどうだろう。

忘れちゃいけないNISA口座

2024年から新NISA制度がスタートした。大まかに言うと、NISA口座の取引分は「積み立て投資(つみたて投資枠)で年120万円、普通の投資(成長投資枠)で240万円の枠内で、売却益や配当金に課税しない」ということ。

「特定口座」という普通の口座では、利益額に対して2割ほど課税される。上記③の人は元手が小さいだろうから、基本的に全て非課税になる。ただ、いったん使った枠は翌年まで復活しないので、何度も売買を繰り返していると、累計で非課税枠を使い切ってしまうかも。

証券口座の開設に際しては、開く口座の種類を「NISA」にすべし。

※NISA口座は1人1口座なので、仮にSBI証券で自分名義のNISA口座を開いたら、楽天証券の自分名義の口座は特定口座にしないといけない。

余剰資金で楽しむ

以下では投資対象を選ぶ際の心得を紹介するが、その前に投資に充てる金額を決める必要がある。

多くの人が株式投資に否定的な理由は「ギャンブルみたい」「暴落するかも」とリスクを懸念しているのだと思う。

もちろん、値上がりの期待の裏返しで、値下がりの危険性もある。「紙きれ」になるのはレアケースだが、原資は「もしもゼロになっても諦められる程度」の余剰資金にすべき。値下がりで余裕がなくなって、生活に支障をきたしては元も子もない。

普通は投資信託(S&P500、オルカン)十分と言われる

投資対象は指数連動型の投資信託商品で十分と言われる。投資信託とは証券会社等がいろんなものを組み合わせてつくった金融商品で、指数連動型は「日経平均」「TOPIX」みたいなのに合わせて値が動く仕組み。

このうち、個人投資家が最初に手出しすべきなのは、アメリカを代表する500社をまとめた「S&P500」、その対象を全世界に拡大した「オール・カントリー(通称 オルカン)」だ。

手数料が限りなく少額で、100円から購入できる。めちゃくちゃ雑に言うと、アメリカや世界が成長している間は値上がりが見込めるから「個別の会社はハードルが…」と尻込みしがちな人に向く。

みんなが賭けているものに賭ける

株式投資は「美人投票」とも言われる。よく分からなければ、まずはみんなが投票している先に少しだけ投票し、値動きを見ながら勉強すれば良い。結局「長期的には指数連動型を買うのが多くの人にとってベスト」と主張する本や投資家は数えきれない。

でも、個別株は楽しい

そうは言うものの、投資信託商品は1日に1回、値段が動くだけだし、いろんな銘柄が含まれているために「自分はこの企業に投資している」という実感に乏しい。

この点、個別株は基本的に平日9~15時の間、ずっと値段が上下する。9時に「始値(はじめね)」と呼ばれる株価が付き、その日の「高値」「安値」をつけて「終値(おわりね)」で「大引け」を迎える。

そんな個別株投資の魅力はどこにあるのか。

株式を持つ=企業のオーナーになる

株式を買うことは企業のオーナーになること。「株トレードで億万長者に!」みたいな人ならともかく、小遣い投資なら好きな企業の株主として応援するスタンスも良い。

株価

世の中の見え方が変わる

これこそ私が妻に少額の投資を勧める理由で、1株でも保有すると世の中の見え方が変わる。

たとえばビールの「キリンホールディングス」の株を買う。ある日、スーパーで「一番搾り」を手に取ると「あれ?最近はスーパードライの方が目立つ棚に置かれてる?」と気になる。「う~ん、アサヒの方が営業が上手いのか?あ、でも、このワインはキリンが輸入してる!このワインも買ってみよう」と、さまざまなことを「自分ゴト」として捉える機会になる。

日々の生活の中で、各社がどんなビジネスに立脚し、どこと競合し、どんな売り方をしており、それを消費者としてどう感じるか、みたいなことを考える。世の中の動きをもっと知りたくなるし、買い物に行くのも楽しくなる。

買う銘柄と時期は分散を

自分が好きな銘柄が決まっているとしても、一括で投資するのは待ってほしい。必ず「分散」を心掛けないといけない。

「卵は1つのカゴに盛るな」

短期の値動きは誰にも読めない。「割高」「割安」をはかる指標はあるが、絶対ではない。健全に見えた企業が不祥事を起こして倒産する可能性もある。だから、業界や企業はもちろん、時期も分散して買うのが吉。

たとえば20銘柄を均等に持っていれば、1社に致命的な事態が起こっても投資金額全体の5%にしか影響しない。でも、4銘柄しか持っていなければ25%がダメージを受ける。

時期を分散すると、株価が安い時だけでなく、高い時に買ってしまうこともある。それでも「高い時だけに買う結果にならなかっただけマシ」と思うべし。

理屈の上での株価は結局のところ業績に連動する。よほど「投機的」でメチャクチャな高騰を見せているような銘柄を避け、しっかりと成長する企業を選んで投資すれば、基本的に株価は今の水準よりも高いところへ伸びるはずだ。

「知ってる会社が少ない」から良い

しかし「分散する」と言われても、投資経験のない人からすると、知っている会社は普段から利用する小売りや食品、アパレル業界などに偏りがち。「あとはせいぜい三菱商事とか、JR東海とか…」。それで良い。

むしろ、初めての投資対象は誰でも知る会社が望ましいと思う。全てが当てはまるわけではないが、そんな会社は成長するべくして大きな会社に成長している。家に関心のないアナタも知っている住宅会社、金融に疎いアナタも知っている銀行こそ、広く世間に認知されて信頼されている可能性が高い。

あまり詳しくないからこそ、できることもある。半端に知識があると、余計な私情を絡めてしまい、結果としてうまくいかないこともある。

たとえば損保業界で何か買いたいなら東京海上、ガソリンならENEOSなど、機械的に業界トップの会社を買い、余力を見て2番手以降に資金を分散する。知識に乏しいからこそ王道を歩める。

株価 チャート

一喜一憂しない

投資を始めると、どうしても日々の値動きで一喜一憂してしまう。でも、特に小遣い投資する人は、いったん買ったら放っておくべき。

含み益も含み損も、それ自体は幻

買った株価を上回って「含み益」が出ると嬉しい。逆に「含み損」が出ると落ち着かない。いずれも「もう売った方が良いかな?」と思うが、気持ちをぐっと抑える。

会社が成長すれば株価は上がる。短期的に上下しても、長期で見れば上がる。よほど致命的なアクシデントが発生したり、買った際の前提条件が揺らいだりしない限り、過去の自分の判断を信じる。そう判断させた会社や社員を信じる。

私個人の経験談でも、下手に頻繁に売り買いするよりは、保有しているのを忘れるぐらい何もしていなかった銘柄の方が結果として多くの利益を得た。

配当金とは何か

配当金というのは、会社が生んだ利益の一部を株主に還元するために配るもの。多くの会社は年に2回、実施している。基本的には決算期末の3カ月ほど後と、その半年後に証券口座か銀行口座に入金される。

いわゆる「高配当」と言われる会社は投資金額に対する配当金額の比率(=利回り)がおおむね3%以上の銘柄を指す。もしも保有20銘柄の平均利回りが4%で計50万円を投資していたら、年間配当金は2万円。極端に大きくはないが、ありがたい金額だろう。

成長する企業は基本的に配当金を増やし続けるので、株をもっているだけで利回りが年々高まることも期待できる。

複利で増やす

配当金を受け取ったらどうするか。20,000円を握りしめて回転寿司店へ行っても良いが、さらに株を買い増して元手を増やしても良い。

50万円の元手を52万円に増額し、翌年は元手を54万800円に増やす。この「800円」がいわゆる複利式の威力。元手が増えると、その元手に対して配当金が出るので、雪だるま式に資産が増える(もちろん、株価下落のリスクはある)。

最初は微々たる金額でも、継続すれば人生が変わるかもしれない。「小遣い」で人生が変わるなんて、なんだか夢のある話ではないだろうか。興味がある方は、ぜひ。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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