お金の「使い方」を学ぼう/経験に変換できるから価値がある/今さら読んだ「DIE WITH ZERO」が良かった

お金の「使い方」を学ぼう/経験に変換できるから価値がある/今さら読んだ「DIE WITH ZERO」が良かった

とにかく読んで良かった。

マネーに関する書籍というと、基本的には「貯め方」「増やし方」を解説する本が多い。この点、本書は「使い方」を指南する数少ない名著と言える。

筆者(私)は2022年に新聞社を辞める前から資産運用を始めた。お金の増やし方に関しては10冊ほど本を読み、独立して定期収入が減った後も株式投資のおかげで何とか資産を減らさずに済んでいる。

「今」使うべき場合もある

しかし、肝心な視点が抜け落ちていた。「お金を、どう活用するか」だ。

新聞記者時代は拘束時間が異常に長く、平日はほとんど家にいなかった。幼い我が子が初めて話した様子も、初めて歩いた様子も、すべてスマホの動画で見ることになった。

その後悔と反省から「脱サラしたら家族のそばにいて、あちこち一緒に出かけよう」と考えた。なのに、いざ独立すると、守りの姿勢から出費を制限して「今」を楽しめなくなった。

本書によれば、お金には使うべき適当なタイミングがある。

同じ絶景や名画を見ても、年齢によって感じることは変わる。幼少期に読んだ本を大人になって読み返すと新たな発見があるのと同じ。何かしらの経験による効用は人生におけるタイミングで変わると胸に刻み、今の自分のとるべき行動を考えたい。

また「将来に備えすぎる」のは無駄が多いという。「3,000万円貯めたら早期引退して人生を謳歌する」と言う人は、ついに3,000万円になると「やはり5,000万円まで…」と労働の無限ループに入り、お金を余らせて死ぬことになるからだ。

もちろん、労働自体も蓄財自体も素晴らしいこと。でも、懸命に働くうちに自分も家族も年齢を重ねる。子どもと海外旅行するとか、ガチなスポーツ大会に出るといった、若くて健康な自分や家族なら楽しめた経験を積む機会は、永遠に失われるかもしれない。

最期の時に何を思い出すか

筆者が本書から得た学びをまとめると、以下のようになる。

貯金額が増えたから人生が豊かになるわけではない。人生を彩るのは思い出であり、お金は経験に変えるから価値が出る。実りある人生を送るには、蓄える金額や使う金額、使うタイミングを最適化する必要がある。

タイトルが「ゼロで死のう」なので「出費しまくることを推奨する内容なの?」と訝る方もいるだろうが、実際は貯め方と使い方の「最適化」を勧める本となっている。年齢にかかわらず、今すぐ、一日でも早く読まれることをオススメする。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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