北陸の小売店で、買い物客が自分で会計する「セルフレジ」の導入が進んでいる。人件費の削減やレジの待ち時間の短縮につながるほか、コロナ禍で非接触サービスに注目が集まる動きが流れを加速させている。
先日、久しぶりに富山市の紀伊國屋書店富山店(富山大和が入る総曲輪フェリオの7階)に行くと、2カ所あるレジカウンターのうち1カ所がセルフレジに変更されていた。
書店のセルフレジ自体は珍しくない。TSUTAYA系の書店では、レンタルのレジでも書籍のレジでもセルフ化が先行している。驚いたのは「紀伊國屋書店」という、どちらかと言うと歴史(由緒?)ある書店も舵を切ったことだ。
紀伊國屋書店富山店は地方の書店としては繁盛している部類だと思う。それでも、富山市に勤務していた頃、特に平日に店を訪れると、レジ係が暇そうに立っているのを見て「あれで時給がもらえるなら楽だなあ」と感じていた。
書籍はバーコードの位置が裏表紙と決まっているし、1度に20冊も30冊も購入してレジを混雑させる人もいないだろう。どちらかと言えば、客が自分で勝手に精算するセルフレジに馴染みやすい業態かもしれない。セルフ化は必然的な流れで、遅かれ早かれ地場の書店も追随するだろう。
万引きの懸念も???
過去の記事で触れたことがあるが、最近のユニクロの店舗は基本的にセルフレジとなっている。これによりレジ担当のスタッフを減らせたものの、一部で万引き被害もあるらしい。
今は商品についている紙のタグに商品情報を読み取るICタグのようなものが入っており、セルフレジで商品を所定の場所に置くと、レジがICタグの情報を読み取って瞬時に合計金額を示す。この仕組みを悪用して万引きする例があったらしい。
手口はこうだ。会計前の商品を5点持っているのに、実は2点分のタグはちぎってその辺に捨ててある。セルフレジでちゃんと5点分の精算をしているように見えても、レジは3点しか商品を認識できないので、2点分は代金を支払っていない、ということである。
この手口が話題になったのはしばらく前なので、ユニクロ側は既に仕組みを改善したかもしれない。
ここで言いたかったのは、セルフレジは買い物客の良心を信用して導入されるということ。多くの小売業者は環境が変化する中、なるべく安く商品を提供しようと工夫しているはずで、その方法の1つがセルフレジ。そんな業者の努力と信頼を裏切る行為は慎んでほしい。
セミセルフレジで処理能力1.6倍に
先日、100円均一ショップ「ダイソー」の金沢市内の店舗にセルフレジが導入された。
百均は時間帯によってレジが混雑するもの。しかし、セルフレジでは店員1人が3台ほどのレジを担当し、たまにエラーが表示された客に対応するだけでよい。稼働するレジの台数が増えたことで、レジ待ちの列は従来よりもスムーズに流れていた。
食品スーパーのアルビス(射水市)は「セミセルフレジ」の導入を進めている。セミセルフというのは、バーコードの読み取りは店員がやるものの、会計やポイント付与などは客がやる仕組みだ。
レジのシステムを手掛けるNECソリューションイノベータのホームページによると、あるスーパーでは、セミセルフレジにしたことでレジの処理能力が1.6倍に向上し、レジの台数や担当者を削減してなお、生産性を上げられたそう。
レジを撤去したスペースは売り場にできるし、レジ担当を外れた店員は他の業務に力を入れられる。セルフレジの導入は、台数によっては数千万円単位の投資になるそうだが、一時的な費用増さえ賄えるのなら、メリットは少なくない。
コロナ禍の直近2年間はともかく、国内は中長期的に労働力不足の傾向が根強く、賃金は上昇基調にある。そうなれば、1円、10円の利益を積み重ねる小売業者にとって、今後ますます避けては通れない分野になってきそうである。