行政処分・自主回収の日医工、業績は底打ちしたか/今期は大赤字も、3Qに改善の兆し

行政処分・自主回収の日医工、業績は底打ちしたか/今期は大赤字も、3Qに改善の兆し

2022年2月15日

日医工(富山市)の2021年4~12月期の連結決算は減収で、営業、最終赤字だった。地元の新聞・テレビはこぞって「過去最大の赤字に拡大」と報道しているが、それは表面的な見方で、筆者としては業績反転の兆しが出始めたとみている。

売上収益営業利益最終利益
3Q実績134,892(▲2.8)▲15,337(赤字転落)▲15,704(赤字拡大)
通期計画185,000(▲1.7)▲17,100(赤字転落)▲18,600(赤字拡大)
単位は百万円。カッコ内は前年同期比増減率=%。▲はマイナス

現在の日医工の業績は目も当てられない惨状だ。国内3大ジェネリック医薬品(GE)メーカーとしての輝きは微塵も感じられない。

その理由は周知の通りで、同社がこれまで法定の手順と異なる方法で医薬品を作ってきたとして、昨春、富山県から行政処分を受けた影響が出た。これにより自主回収のための費用がかさんだほか、工場の一時稼働停止による減収影響などで業績が悪化した。

ブランドイメージは傷つき、一部に「不買運動」のような動きも起こったとの報道もあった。

3大GEメーカーで比較、日医工は低収益

ここで、3大GEメーカーに数えられる日医工、サワイグループホールディングス(大阪市)、東和薬品(大阪府門真市)の過去4年間の業績推移と今期(22年3月期)の業績予想を比較してみる。

単位は百万円。22年3月期は同年2月時点で公表している予測値

21年3月期以降は新型コロナウイルスの拡大に伴う医療機関の受診抑制の流れが強まり、GEメーカーは収益が伸ばしにくい。それでも、サワイ、東和は売り上げを伸ばし、自主回収を進める日医工は減収基調となって相対的なポジションを落とした。

営業利益で見ても傾向は大差ない。むしろ、日医工はコロナ禍や自主回収の前から営業利益が減少傾向にあったことが分かる。

日医工は近年、事業の拡大に向け、武田テバファーマ(名古屋市)が岐阜県に持っていた工場の取得などで積極的に投資しており、その辺りの負担が大きくなっていた可能性はある。

上の表のように、営業利益も同業2社と比べて低い状況が続いていた。

ただ、自主回収の費用や操業停止による減収というのは一過性の影響に過ぎない。対患者、対医療機関という目で見て、信用力やブランド力の回復こそが、長く業績に影響を与える要素となる。

採用軒数は横ばい維持、3Qは赤字は大幅縮小

この点、今3Qの決算説明資料を見ると、国内の施設区分別採用実績として、GEは病院・調剤薬局12万3,719軒に採用されていると紹介している。これは前年同期比0.2%(239軒)の増加に当たる。

日医工の本社=富山市内

また、カバー率は全売上の7割近くを占める調剤薬局が98%、2割近くを占める病院が98%で、前年並みの水準を維持し、依然として大部分の薬局や病院で採用されていることが分かる。

こうした中、同社の今期の業績を3カ月ごとに区切ると、コア売上収益は落ち込みの大きかった2Q(7~9月期)の323億円に対し、3Q(10~12月期)が388億円。営業損失は2Qの96億円に対し、3Qは7億円に大きく改善した。

つまり、9カ月や12カ月で見れば「過去最大の赤字」なのだが、既存の販路がしっかり確保されているほか、業績も2Qで底打ちした可能性がある。これほど業績が悪化すれば、しばらくは内部の改革・改善に力を入れることが期待され、岐阜県の工場などがプラスに寄与すれば、近年は低水準だった利益率が改善するかも知れない。

株式市場も決算内容を好感

同社の株価には下げ止まりの感がある。コロナ前は1,300円前後だった同社の株価はコロナと行政処分、それらに伴う業績悪化を受けて下落し続けたが、21年末に600円台半ばを付けて横ばいで推移し、22年に入ってからはじわじわと上がっている。

14日発表の決算を受けた15日は、午前10時半時点で前日終値比で34円(4.41%)高い805円で取引され、株式市場が決算内容を好感したとうかがわれる展開となっている。

【追記】15日終値は811円で、前日の終値から40円(5.19%)高かった。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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