JR西日本は2022年度中に、白山市の白山総合車両所内で、北陸新幹線のW7系車両1編成(12両)を使った自動運転の実証実験を始める。
上の一文だけで、なんだか凄いことが始まりそうな響きだ。
JR西は現在、自動運転機能を支える要素技術開発として、①車両を自動で加減速させ、所定の位置に止める制御装置②走行中の車両に発生した異常を自動的に検知し、安全に停止させるシステムーを検討しているらしい。
実証実験では白山総合車両所の敷地内で、念のため運転士が同乗した状態で車両を走らせ、機能の評価や課題の洗い出しを進める。
むしろ異常検知の機能こそ
JR西は2018年に「技術ビジョン」なるものを策定。だいたい20年後の世界でJR西の路線を巡る状況として望ましい姿を描き出した。その中には「人と技術の最適な融合」という項目がある。どこの企業でも同じだが、人は人にしかできないことに集中し、機械化できることは機械化し、何なら人手でやるよりも安全性を高めるという意味だろう。
上記の①と②を見ると、こと「自動運転」という意味では①の方がイメージしやすく、先進的な印象を受ける。人材育成などにかかるコストの削減にもつながりそうだ。
ただ、筆者は②こそ意義が大きいと考える。
2017年12月11日、博多発東京行きの東海道新幹線「のぞみ」で異音や異臭が発生し、名古屋駅で運転が打ち切られた。その後の調査では、車両の台車にあるモーターの回転を車輪に伝達する継手が変色していたほか、台車枠には亀裂が入っていると判明した。この件を運輸安全委員会は新幹線で初めての「重大インシデント」に認定した。
生身の人間を乗せている以上、鉄道であれ、航空機であれ、バスであれ、タクシーであれ、事故は決してあってはならない。その事業に関わる人たちは、日々、そうした高い職業意識を持つ必要がある。
とは言え、人間が関わる以上、事故が完全にゼロにならないのも事実。定時運行を旨とする日本の鉄道業界にあって、JR各社は乗務員が異常を確認したら報告し、早めに列車を止められるよう環境の整備を進めてきた。
もちろん、そうした仕組みの充実は大切だが、人間の能力には限界がある。特に走行中の車内では、乗務員がどれだけ注意深く働いていても気付かない異常はあるだろう。他方で機械の果たせる機能にも限界がある。
技術ビジョンに掲げた「人と技術の最適な融合」とは、人と機械(やシステム)、一方が一方に依存する、頼りきることではなく、補い合うことで、より達成に近付くと思う。その意味で筆者としては①はもちろん、②の進展に期待している。
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