2021年の全国学力テスト、石川県の子どもが4冠!…も、制度設計自体に疑問アリ

2021年の全国学力テスト、石川県の子どもが4冠!…も、制度設計自体に疑問アリ

2021年8月31日

2021年5月に実施された文部科学省の全国学力テストで、石川県の小学6年生、中学3年生の正答率は、小学生2教科(国語、算数)、中学生2教科(国語、数学)の調査対象4部門全てで全国トップとなった。

※石川の子どもたちではありません

昨年はコロナで中止になり、2年ぶりの実施。石川県では約1万8000人が対象だった。

元「石川の子ども」の筆者として、この結果はとても誇らしい。

自分の子どもたちも、こんな教育県の学校で義務教育を受けられるのかと思うと、無料なことが信じられないぐらいだ。素晴らしいじゃないか、石川県。

しかし、この調査をよく見てみると、一つ、大きな疑問が浮かぶ。

 

テストの結果は「公立限定」

マスコミが「石川が全国トップ」「福井が初の首位陥落」と騒ぎ倒すこの調査、国立教育政策研究所の公開資料をよく見ると、小学生、中学生とも「公立」の子どもたちが対象となっている

石川県では公立以外の小学校、中学校と言うと、明らかに全体平均より学力が高い学校は金沢大学附属ぐらい。(追記・筆者の経験では、公立の小学校で当然のように学年トップをとっていても、国立の中学校に入った途端、何もしなければ学年で「中の下」「下の上」になるぐらい、レベルが違う)それらの学校は各学年の人数が100人前後。県内全体から見れば、かなり少なく誤差の範囲だ。だから、石川県では「子どもの学力≒公立に通う子どもの学力」である。

ところが、都会は違う。「公立に通う子の平均学力<<<国立・私立を含めた全員の学力」となる可能性がある。

筆者が大学進学で上京し、学習塾や家庭教師のアルバイトをした際、国立や有名私立に通っている子ども、そうした学校を目指している子どもたちが、あまりに意識高く勉強している姿に驚いた。

筆者のように、のびのびとした田舎で、ふらふらと遊ぶ合間に、片手間で大学受験の勉強をしていたような身からすると、塾に通った上で、その補習を家庭教師に委ねて習い事までこなす都会の子どもたちは異次元の存在だった。大都市圏には、こんな子どもたちが相当数いるのである。

 

国立、私立を含めれば、東京が1位?

今回のテスト、例えば小学生の算数では石川の正答率が74%、東京も74%で、平均正答数の関係で石川が上位ということになっている。東京には複数の国立小学校、中学校があり、有名な私立小学校、中学校が無数にある。優秀な子のうち、一定伊集の割合は幼い頃から、そっちの学校に進む。

同じ小学生の算数では、千葉、神奈川、京都、大阪、兵庫といった、他に有名私立が多い地域も、今回のテストでは正答率が70%を超えている。もし、公立だけではなく、国立、私立の子どもたちを混ぜて集計したら、結果がどれほど変わるかは分からないが、石川は1位ではなくなる可能性が高そうだ

もちろん、こうした主張をして「石川の子は大したことない」と言うつもりはない。結果は結果で、頑張ったと褒めてあげるべき。しかし、大人の側はこうした限定された範囲での「好結果」にぬか喜びして「成果が出た」と言っていてはいけない。階級別ではなく、無差別級で全国一になるには何が必要か、不断の努力が必要だと思う。

それは教育委員会や教員はもちろん、地域の大人全員の力にかかっていると思う。日常的に、疲れて生気のない大人の姿を見せられていると、子どもに芽生え始めた向上心や学習意欲は摘まれてしまう。大げさな物言いにはなるが、大人1人1人が子どもたちの人生の教師、ロールモデルの1つなのだという自覚で日々を過ごしたい。

 

国立教育政策研究所による公開資料は以下のリンクからhttps://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/factsheet/prefecture-City.html

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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