野々市市二日市4丁目にあった結婚式場「ラヴィール金沢」が閉館した。現地では既に解体工事が始まっている。
結婚式場と言えば、カップルが(一応は)永遠の愛を誓い合う神聖な場所。
そこに重機が入り、チャペルが音を立てて崩れる様子は、ただの通行人であってラヴィール金沢に縁のない筆者にとっても、ちょっと衝撃的な光景だった。
10年間で1,500組が挙式
ラヴィール金沢のホームページなどによると、同施設は運営会社が2012年に創業してから約1,500組が挙式し、2022年7月31日に閉館した。
結婚情報サイトの口コミを見ると、チャペルのステンドグラスを高く評価する声が多く、次いで料理を褒める書き込みが多かった。
上の写真を見返してみると、ステンドグラスが取り外されているようにも見える。建物の解体に当たり、先に処分したのか、どこか違う場所で活用されるのか。
極めて転用しにくい構造
ラヴィール金沢の解体を見て再認識したのが「式場の転用しにくさ」だ。おそらく10年前後という築年数の新しさだけを見ると、次の買い手や借り手が現れてもおかしくはない。
ただ、ラヴィール金沢のような「ゲストハウス型」の婚礼施設は、チャペルや宴会場、控室、プール、広い庭園といった設備からなる特殊な構造をしている。
この建物を別の業態で活かすなら、宴会場やレストランぐらいに限られるだろう。ところが、不特定多数が利用し、アルコールも提供する飲食施設の立地として、郊外にある施設が魅力的とは言えない。
じゃあ、市街地であれば転用がきくかというと、結局は構造の汎用性の低さがネックになる。金沢市清川町にあった結婚式場「金沢モリス教会」は、2016年の閉館後、近くの料亭「つば甚」のグループが取得。学生らが使う施設として活用していたが、金沢経済新聞によると、2021年1月に結婚式場「金澤モリス教会」として再出発した。
金沢駅に近かった「マリエールオークパイン金沢」も閉館後に解体され、今は大規模分譲マンションの建設現場になった。
金沢市片町地区の再開発ビル「片町きらら」の最上階にも現在、婚礼施設が入っている。ここは商業施設の1~3階とは違い、1階の専用の出入り口があり、専用エレベーターで上がる構造になっている。
婚礼施設と商業施設の間はオフィスフロアになっている。万が一、婚礼業者が撤退するようなことになったら、1~3階と最上階は分断されているため一体運用できず、しかも独立した婚礼施設は前述のように転用しにくい特徴がある。
詰まるところ、更地にするか、婚礼施設の跡は他の業者が婚礼施設として引き継ぐのが最も自然だと思うが、根強い晩婚化・非婚化の流れの中、コロナ禍ではブライダル市場の縮小に拍車が掛かっている。
察するに、今回の件でも、後継の会社がすんなりと見つかる可能性は低いとみられ、閉館から2カ月を待たず解体を始めるに至ったのだろう。
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