【コロナ禍の結婚】㊦ 2021年の全国の婚姻は50万組、コロナ前と比べて10万組の減少

【コロナ禍の結婚】㊦ 2021年の全国の婚姻は50万組、コロナ前と比べて10万組の減少

新型コロナウイルス禍で、婚姻数が大きく減少している。2021年の全国の婚姻件数は50万1,138組で、2020年と比べて4.6%(2万4,369組)少なく、コロナ前の2019年と比べて16.3%(9万7,869組)少ない水準となっている。

この連載の㊤は以下のリンクから

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ピーク時の半数以下に落ち込む

厚生労働省の資料によると、全国の婚姻件数は1972(昭和47)年の109万9,984組がピークだった。

下に転載したグラフでは2020年分までしか表示されていないが、2021年は前述の通り、さらに減少して約50万組になっている。つまり、ピーク時の半数以下に落ち込んでいる。

出典・厚生労働省

しかも、近年は冠婚葬祭の簡素化・小規模化が進んでいる。葬儀は家族葬が市民権を得た。昔は職場の上司から旧友、親戚一同までを招いた婚礼も、招待人数が減り、式や披露宴を挙げないカップルも増えている。

特にコロナ禍では多くの人が広域から集うことへの抵抗感が高まった。式や披露宴を何度も延期したり、中止したりする例も増えた。

市場規模の縮小、婚姻数の減少より深刻

矢野経済研究所(東京)が2022年6月に公表したレポートによると、ジュエリー販売や結婚仲介サービスなどを含むブライダル関連業の市場規模は、2021年に1兆4,945億円に回復する見込みで、2020年実績から17.6%拡大するとみられる。

ところが、2021年の市場規模(見込み値)をコロナ前の2019年実績と比べると、38.1%も小さい水準となる。金額で示すと、21年と19年の差は9,226億円に上る。

21年の婚姻件数が19年と比べて16.3%減だったことから考えると、婚姻件数の減少幅も大きいが、関連市場の縮小は輪をかけて厳しいことが分かる。つまり、結婚するカップルが減っている以上に、結婚のために金を使う機会が減っているということだ。

この連載㊤では、野々市市の婚礼施設の閉館を取り上げた。ここまでの文脈で言えば、婚礼施設は婚姻組数というよりも市場の縮小に影響を受ける業界であり、だからこそ、ここ北陸でも閉館する事例が少しずつ増えているのだ。

過去最高の売り上げから、一転して半減

ブライダル関連の上場企業の業績をざっと見てみる。

業界トップのツカダ・グローバルホールディング(東京)の2021年12月期の純損益は、106億円の赤字だった20年12月期から改善したが、61億円の赤字だった。業界3位のテイクアンドギヴ・ニーズ(同)は22年3月期の売上高が394億円で、過去最高だった19年3月期から半減近い水準となっている。

以下に、北陸でも馴染みのある企業を加え、業績をまとめる。

ブライダル業者コロナ前売上高直近の売上高コロナ前純損益直近の純損益
ツカダ・グローバルホールディング61133425▲61
テイクアンドギヴ・ニーズ6683942218
エスクリ333222104
アイ・ケイ・ケイホールディングス20111513▲4
単位は億円、▲はマイナス=赤字

興味深いのはコロナ前の売上高が、少なくとも上記4社はいずれも過去最高だったこと。連載㊤でも触れたように婚礼施設は転用しにくい。「施設を持ってナンボ」の装置産業では売り上げが減っても多大な経費は減りにくく、利益率は悪化する。


上記業者は晩婚化・非婚化で市場が縮小する中、郊外のゲストハウス型施設を展開して業績を伸ばしてきた。ところが、ここに来て、その成功の方程式が崩れ始めた。

婚姻組数は短期的にコロナ禍の急減の反動増があるとしても、長期では人口減少に伴って減るだろう。筆者が注目するのは上記の通り、組数の減少以上に、婚礼に金を使わなくなっている可能性があることで、そうした新常態にどこまで対応できるかが、今後の生き残りの鍵を握ると思っている。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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