※以下はあくまで新聞報道を受けた私見であり、誰かしら関係者の依頼や要請を受けて書いたものではありません。
小田與之彦社長(53)が辞任し、父の禎彦相談役(82)が復帰する加賀屋(七尾市)の人事に関し、北國新聞は2022年10月3日、取材に応じた禎彦氏が「(交代は)確執でも何でもない」と語り、「鍛錬のため」に與之彦氏が「つるや」に専念すると説明したと報じた。
筆者としては、この報道に違和感が大きい。そもそも、50代の息子の代わりに80代の父親がトップに返り咲くというのは、健康不安や経営不振、不正などがあったならともかく、そうでないなら新聞にもある通り、異例のこと。
この点、ある程度の事情を知る人の間では、社長と相談役の間で経営に関する見解の相違が大きかったことは有名。「確執でも何でもない」なら、互いになかなかの年齢なのに、なぜ交代するのか。
「鍛錬して復帰を」?
交代の狙いについて、記事では禎彦氏が「外で鍛錬して、また復帰して力強く私と共にやってほしい」と語ったとある。
いや、30代の息子に50代の父がかけた言葉なら分かる。しかし、與之彦氏は50代で、8年にわたって社長を務め、加賀屋の「日本一の旅館」としての地位を守ってきた。
ここ数年は新型コロナの影響で団体客やインバウンドが減り、経営が大変だとは聞くが、それは外部環境が原因。仕方のない面も大きい。筆者のような外野からすると、今さら「鍛錬」が必要な理由が分からない。
そして、失礼ながら言うと、82歳が言う「また(中略)私と共に」とは、どれぐらいの時間軸の話なのか。せっかく取材機会があったなら、こうした当然の疑問に答えるような質疑応答をしてほしかった…。
「ホールディングス」の役員=経営の第一線?
ちなみに、記事では「加賀屋のホールディングスには(役員として)所属している」とあり、與之彦氏がグループ経営の第一線に残るという印象を醸している。一般に「ホールディングス」とはグループ各社を統括する持ち株会社を指し、最も上位の存在だからだ。
しかし、加賀屋のホームページを見てみると、既存の「株式会社 加賀屋ホールディングス」は事業内容が①客室係業務②接客業務の請負、となっている。
これを見る限り、グループを統括する会社ではないばかりか、むしろ「株式会社 加賀屋」の下請け業務を行う子会社のように見える。
記事は「ホールディングスに残る」=「ジャイアンツを退団するわけではない」との受け答えを示す。四番バッターではなくなるけど、1軍の一番、六番当たりで今後も活躍してもらう、と言わんばかりだ。
ところが、このホームページからは、確かに退団はしないものの、1軍の四番から、2軍・3軍の四番に格下げになる感じに見える。
一連の新聞報道と加賀屋側の説明で煮え切らないのは、背景を「…ではない」という局所的な否定をもって説明するばかりで、はっきりと「…だからだ」と示していないから。
そして、肝心の與之彦氏が不在の「欠席裁判」のような様相を呈しているため、世間の人からすると「裏」や「闇」を想像してしまう所以になっている。
何だか余計に謎が深まってきた。
筆者としては交代の背景に全く心当たりがないわけではないので、タイミングをみてさらに本格的に取材してみようか、と思っている。
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