北陸電力、一般家庭の半数で電気料金を45%値上げ/「規制料金」該当の家庭、23年4月適用へ/年3万円超の支出増に

北陸電力、一般家庭の半数で電気料金を45%値上げ/「規制料金」該当の家庭、23年4月適用へ/年3万円超の支出増に

2022年11月30日

北陸電力は2022年11月30日、同社と契約する一般家庭115万件の半数55万件に関わる「規制料金」の改定を、経済産業大臣に申請した

オール電化住宅などの料金改定に関する続報は以下のリンクから

【続報】オール電化住宅の電気料金、1割超の値上げ/北陸電力、23年4月/月2700円の負担増

北陸電力は2023年4月1日、オール電化住宅などが該当する「自由料金」プランの電…
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値上げ率は平均45%で、値上げ幅は大手電力会社で最大となる。2023年4月1日からの適用を目指している。

(22年11月30日の朝刊1面で「3割以上の値上げの可能性」と書いた地方新聞があった。「間違ってはいない」と言い張るだろうが、市民感覚で言えば明らかな誤情報。何だか残念だ。本当に取材したのか。他の電力会社が「28~39%値上げ」というのを見て、根拠なく「3割」と書いたのか…。)

オール電化は今回の対象外

「規制料金」とは2016年の電力小売り全面自由化以前からあるプランで、燃料価格の上昇分を電気料金に転嫁できる上限が決まっている。北陸電力では現在、燃料費の高騰が転嫁の上限を振り切っており、電気を作れば作るほど赤字が増える状況にある。

規制料金は一般家庭のほか、小規模な工場・商店が利用。改定には経済産業大臣の認可が要る。

北陸電力で言うと、今回の値上げ対象となる規制料金に該当するのは、以下の表の契約者だ。

出典・北陸電力ホームページ

一方、規制料金以外に「自由料金」という契約の形があり、これは例えば夜間の料金を割安にするなど、電力会社が柔軟にサービス内容を決められる。オール電化住宅などが該当し、今回の値上げの対象ではない(ただ、これから改定が検討されるらしい)。

北陸電力で言うと、以下の表にある契約者だ。

出典・北陸電力ホームページ

月モデル料金、2,696円プラスの9,098円に

従量電灯Bのモデル家庭(月間使用量230kwh)では、1カ月の電気料金が現状で6,402円のところ、2,696円増の9,098円になる。年間に直すと3万2,352円の増加だ。

従量電灯Cの月額モデル料金は2万1,733円から3万1,094円に、低圧電力は1万6,843円から2万3,468円に上がる。

北陸電力は12月中旬以降、各家庭に料金改定を伝える文書を、郵送かメールによって送る。問い合わせ専用ダイヤル(0120-012433)を既に開設した。

多く使う場合は値上げ幅が大きい

少しややこしい話を、なるべく簡潔にする。北陸電力は今回、いわゆる「電気料金」に含まれる3つの料金制度を見直した。

基本料金は据え置き

電気料金は固定の「基本料金」と使った電力量に応じて変わる「電力量料金」がある。今回は基本料金を据え置き、電力量料金のみ改定する。

使用量が少ない人は値上げ抑える

電気料金は使用量に応じて3段階に分かれている。今回は使用量が多い段階ほど値上げ幅が高く、使用量が少ない人は値上げ影響が小さくなるようにした。

夏季料金の見直しで一律に

従来は電気使用量が増加しがちな夏季の料金を高く設定していた。しかし、改定後の料金では夏季とそれ以外の時期の季節料金を一律とする。

値上げ背景:燃料費が5倍に急騰

足元では長引くコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻の影響から、石油や石炭などの燃料価格が急騰している。北陸電力が申請に際し、今後3年間(2023~25年度)の原価を試算したところによると、燃料費は2008年改定の現行原価と比べて約5倍に高まる。

このままでは年間184億円の収入不足になるという。

背景には、志賀原発の停止が長引く中、石油や石炭を燃料とした高コストの火力発電に頼らざるえを得ない事情がある。2008年改定時に火力の比率は62%だったが、今回の改定に際しては76%を火力で賄わなければならないと試算した。

志賀原発は26年1月稼働を想定

この試算の中で北陸電力は、停止中の志賀原子力発電所は新規制基準の適合性審査を経て、2号機が2026年1月に再稼働すると想定した。つまり、上の試算では、わずか3カ月だが低コストの原子力発電も寄与すると見込んでいる。

施策:料金の通知、24年4月にネットへ完全移行

北陸電力は2011年の東日本大震災後、366億円分の経営効率化を進めてきた。今後はさらに132億円の効率化を目指す。

例えば、2022年度に2,596人いた経費対象人員は段階的に減らし、25年度には2,395人にする。これにより、給料手当の年額は172億円から166億円へ6億円削減できる。

毎月の電気料金や使用量のお知らせは、現在、紙とインターネットが併存しているが、2024年4月にネットへ完全移行することになった。

こうした新旧サービスの併存は、効率的な新サービスに移行した人が、未だに旧サービスのままでいる人にかかるコストの一部を負担しているようなもの。今回の値上げ申請云々にかかわらず、大いに進めてもらえばよいと思う。


値上げを回避したいのは消費者として当たり前。でも、全てを頭ごなしに非難すべきではないと思う。

これが菓子ならこっそり内容量を減らし、実質的に値上げすることもできる。ところが、電気は薄めて売るわけにはいかない。

燃料高騰で費用より収入が低い異常な状況が続いて電力会社が疲弊すれば、長い目で見て消費者に皺寄せが来かねない。北陸電力の企業努力を前提に、消費者も相応の負担を甘受すべきと言ったら、物分かりが良すぎるだろうか。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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