津田駒工業(金沢市)は2023年4月13日、23年5月中間期・11月通期の利益予想を下方修正し、中間期は赤字継続に、通期は利益ゼロに引き下げた。山田茂生社長(62)がわずか1年で退任し、前社長の高納伸宏会長(69)が兼務する同日付人事も発表した。
※当サイトでは下方修正を既定路線として記事化(下記リンク参照)していた
根っこに拭えぬ問題??
津田駒工業は業績予想を下方修正した理由を、買った部品の納入が遅れたから船積みができず、また部品調達費やエネルギー価格が高かったため利益が下振れしたなどと説明している。
しかし、部品やエネルギーの価格が高くなったのは全産業に共通する話で、各種メーカーは原材料価格の上昇分を製品価格に転嫁してきた。ここから、津田駒工業で赤字が続く背景として、まずは原材料高を転嫁しきれていない状況が垣間見える。
また、貸借対照表によると、23年2月末の製品在庫は1年前より10億円多い63億円、仕掛品は3億円多い14億円と膨らんだ。そして、足元で工作機械事業が黒字化する一方、本業の繊維機械事業は赤字基調が続いている。
そもそも、新型コロナが世間の生産活動に影響し始めたのは20年春以降だ。対する津田駒工業が会社として赤字なのは、19年11月期以降ずっと。コロナ禍のマイナス影響が出るより前から、繊維機械事業が生産システムなど根っこの部分で大きな問題を抱えているように映る。
株価は時間外取引で急落
当サイトでは上記のような疑念をもとに「業績の回復はそれほど簡単ではなさそう」というスタンスで記事を書いてきた。
それなのに、中国の経済活動再開に合わせて「中国向けの比率が高い津田駒工業の業績が急回復するだろう」という報道もあり、2023年3月中旬に480円前後だった株価は、4月13日に一時609円をつけるまで上昇した。
この1カ月で3割近く値を上げたわけだが、4月13日の大引け後の下方修正を受け、時間外取引では一時500円を割り込む(つまり2割近くの下落)水準まで売られた。
株取引は自己責任。でも、津田駒工業は期初に「5期ぶり黒字になる!」という強気予想を公にしていたのだ。それが、ほんの3カ月後、ビジネス環境が極端に悪化したとも思えない中で、いきなりの赤字修正である。
この点、ある関係者は「津田駒の強気予想は……文化だから」と苦笑した。文化なら仕方ないな。んなわけない。投資家は「騙された」という感覚が強いだろう。
首切り、金策のため 使い捨て?
さて、2022年2月に社長に就いた山田茂生氏は、わずか1年2カ月での退陣となった。会長兼社長となった高納伸宏氏は、2015年から7年間にわたって社長を務めていた。これまで山田氏が担っていた「法務・コンプライアンス室担当」も兼務する。
つまり、山田氏はヒラの取締役となる。
(追記)4月14日付の北國新聞に「高納氏は取材に対し、山田氏の引責辞任について否定し…」という記事が載った。その上で「体制強化を図るため」に社長を交代するという。
的外れ過ぎないか。津田駒工業の大赤字体質はコロナ前にできていた。それを引き継いで社長を務め、赤字が続いたからって、何の責任をとるのか。野球では先発投手がランナーを溜めた状態でリリーフした投手が打たれても、ランナー分の失点は先発投手のせいになる。それと同じに考えるべきだ。
そして、赤字基調をつくった社長が返り咲くと、なぜ体制強化になるのか。そこを詰めるのが記者の仕事だと思うのだが……よく分からない。
山田氏は1年余の在任期間、早期退職の募集や金融機関との調整・行脚といった後ろ向きな仕事が多かったように推察する。外野から見ると「ヒール役の使い捨て社長」として泥をかぶるために祀り上げられ、そして降ろされたのではないか、と勝手に気の毒に思ってしまう…。
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