【独自】「ラン♪Run♪Bus(ランランバス)」、2024年1月末に運行を終了/民事再生のアペックス/開始から3年、黒字化ならず

【独自】「ラン♪Run♪Bus(ランランバス)」、2024年1月末に運行を終了/民事再生のアペックス/開始から3年、黒字化ならず

2023年12月1日

民事再生法適用を申請した食品運送業アペックス(金沢市)が運行する無料乗合サービス「ラン♪Run♪Bus(ランランバス)」が、2024年1月31日をもって完全に終了することになった。運行開始から3年弱、黒字化が難しい中で事業の継続を断念した。

2021年3月にサービス開始

ランランバスのサービスは2021年3月、かほくルートの設置から始まった。特定のルートを定時運行する仕組みで、すぐに内灘ルートも開設され、路線数を増やした。アペックスが事業を運営し、グループ企業の「なるわ交通」(金沢市)に運行業務を委託していた。

サービス開始当時は新型コロナウイルス禍で人流が滞っていた時期。アペックスはコロナ対策をしっかりする一方で、市民が外出の機会を完全になくしてしまわないように、との思いから社会的な意味合いを持つサービスとして始めたという。

アペックスによると、最盛期には6ルートを運行し、南は加賀市、北は羽咋市、東は県境を越えて南砺市にまで運行エリアを広げていた。

スポンサー料でコスト相殺図るも…

ランランバスの描いたビジネスモデルは面白いと筆者は思う。普通、移動手段というのは実際に利用する人から運賃なり料金なりを徴収するが、ランランバスはスポンサー企業から金を集めて運行コストをまかない、利益を出そうというものだった。

ホームページを見ると、2023年12月1日時点のパートナーとして、アルプやスコール金沢、アントール、加賀電子などの企業が名を連ねている。このほか、商業施設などもスポンサーだという。

「ラン♪Run♪Bus」ホームページより

ただ、足元では人件費や燃料代が上昇。金沢市近郊の2ルートのみに絞って運行しているものの、担当者によると、サービス開始時から赤字が続いて黒字化が遠い中、コスト増が追い打ちをかけてサービス終了の判断に至った。

往時は月8,000人が利用

さて、利用状況はどうだったのか。

アペックスによると、6ルートを有し、県境を越えて運行していた最盛期は、月間の利用者が約8,000人に上ったという。1日平均で250人ぐらいが乗っていたということになる。

ただ、路線の減少に伴い、もちろん利用者も減る。直近の数字として、2023年10月は4,842人となっていた。

まとめ・課題は「フリーライダー」?

新しいビジネスをつくろうと取り組む姿勢は、筆者も大いに尊敬している。その上で今回うまくいかなかった原因を考えてみる。

このビジネスモデル、商業施設からすると、自分のところの停留所で何人が降りたかは把握できるものの、そのうちの何人が実際に買い物したかまでは追跡できない。そのバス停で降りて自宅に帰る人もいるかもしれないからだ。

経済学に「フリーライダー」という言葉がある。簡単に言えば、本来の対価を払わず「ただ乗り」する人のこと。ランランバスでいえば「無料やし、買い物じゃなく病院と自宅への移動に使おう」という利用ケースが考えられる。

「ラン♪Run♪Bus」ホームページより

こういう人物はランランバスの理念やサービス内容にコミットしているわけではない。「無料」という点に大きな魅力を感じており、ランランバスに紐づいた広告や企業活動に対する関心が薄いとみられる。

そのため、スポンサー企業にとっては「広告効果」というのがリアルに感じにくくなってしまうだろう。

「広告効果って、そんなもの。社会的意義に寄付しているんだ」と割り切ってもらえるなら良い。でも、上記のようにフリーライダーも考えられる状況だと「やったけど、あまり効果なさそうなので…」という印象論になってしまいかねない。


筆者自身も直面しているところだけど、新しいサービスを生み出すのは難しい。

だって、スポンサー候補にすぐに魅力を感じてもらえるビジネスは、だいたい誰かが先にやっている。一方、あまりに新奇性が高いと、今度は相手に魅力が伝わらない。伝わらなければ協力を得られない…。

そういう意味で、ランランバスのチャレンジ精神と展開力は見習い、筆者も無い頭をひねり続けてみようと思います。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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