東証1部上場のアイ・オー・データ機器(金沢市)は2022年2月9日、創業者の細野昭雄氏が代表を務める会社AHC(金沢市)から買収の提案があり、取締役会として賛同すると発表した。AHCは市場に流通する全株式の取得を目指した公開買い付けを行い、成立すれば、アイ・オー・データの上場を廃止する。
※続報は以下のリンクから
細野氏はアイ・オー・データの創業者で、現在もアイ・オー・データの代表取締役会長を務めている。
今回の買収は対象会社(今回で言うアイ・オー・データ)の経営陣(同細野氏)が買収資金を出資し、買収対象会社の事業の継続を前提として株式を取得する「マネジメント・バイアウト(MBO)」と呼ばれる手法を使う。
既に細野氏、細野氏の妻幸江氏、細野氏の資産管理会社の3者はMBOに賛同の意向(自分と奥さんなので当然だけど…)を示している。細野氏ら3者の持ち株比率は27.37%に当たる354万株。
市場の株主の過半数が賛同すれば成立
MBOの成立条件は一般株主の過半数が賛同し、公開買い付けに応じること。簡単に整理すると
発行済み株式総数 1,483万株 から
アイ・オー・データが持つ自己株式を引くと 1,296万株 になる
さらにMBOに参加しないアイ・オー・データ関連財団の持ち株を引くと 1,096万株
ここから細野氏ら3者の 354万株 を引いた 741万株 の過半数が公開買い付けに応じればMBOが成立する
ということになる。
一般株主の半数が反対すれば不成立になるのだが、公開買い付け価格は1,300円で、2月9日の終値896円と比べて404円(45.0%)も高い。基本的には大部分の株主が買い付けに応じるはずだ。
ソフトウェアへのシフトに危機感
さて、アイ・オー・データと言えば、細野氏が1976(昭和51)年に金沢市で設立。2004年にジャスダック上場、16年に東証1部上場。子会社6社、関連会社2社を有し、22年6月期の連結売上高は580億円を見込むなど、石川県を代表する上場企業だ。
そのアイ・オー・データが、なぜ今、上場廃止なのか。同社の公表資料では、AHC代表としての細野氏の見解が紹介されている。内容を簡単にまとめて言葉を補うと、以下の通り。
これまで、主にパソコン回りのハードウェアを作って販売してきた
ところが、近年は海外勢との価格競争が激しく、またクラウドコンピューティングに代表されるように「ハードウェアからソフトウェアへ」の流れが強い
同社としてはコスト競争力を強化して収益性を高めるとともに、新事業領域としてハードウェアにソフトウェア・サービスを組み合わせたソリューション型商品を確立する必要がある
それには中長期的な姿勢で時間をかけて臨むべきだが、上場していたら短期的な利益の追求や株主への配慮で、思うように事業構造の再編を進められない
同社が過去最高の売上高を出したのは2004年6月期で、728億円。もう随分と前である。
本業のもうけを示す営業利益は過去最高が38億円。こちらは何と1995年6月期の業績で、30年近く前のことになる。
筆者はパソコンに全く詳しくないが、たまに家電量販店でUSBやWi-Fiルーターの売り場を覗くと、アイ・オー・データの製品を含む各製品が激しい価格競争にさらされていることを実感していた。
公開買い付け期間は2月10日から3月28日までとなっている。