ベビー用品などを販売する西松屋チェーン(兵庫県姫路市)の経営、店舗運営が凄い。
北陸経済に特化してニュースを発信するこのサイトだが、子育て中の父親として、1人の西松屋ファンとして、この記事は書かざるを得ない。
最大の凄さは徹底したローコストオペレーション。店舗を訪れると分かるが、店内はスタッフが少ない。
地方にある路面店の床面積は、同じ地方にある標準的なドラッグストアと同じぐらい。その規模のドラッグストアなら常時4、5人は働いていそうだ。同じ小売業のユニクロも、同規模の店舗なら7、8人はいるだろう。
しかし、西松屋は2、3人で、いかにもパート従業員という感じの女性が多い。単純に考えれば人件費はドラッグストアやユニクロの半分以下。子ども用の洋服が1枚数百円という安さに、人件費の安さが貢献しているのは間違いない。
店ごとの個性を排除?
では、なぜそんな少人数で店が運営できるのか。私見では、店や地域ごとの個性を排除し、全ての店に共通するオペレーションを組んでいるためだと考えている。
例えば、西松屋の店舗レイアウトは、基本的にすべての店舗で同じだ。入ってすぐにプライベートブランド(PB)商品を中心とした季節の衣料品があり、幼児用の服が続く。少し奥に、夏なら水着やプールバッグ、冬なら手袋やマフラーなどの季節商品がある。さらに▽少しお兄さん、お姉さん向けの服▽靴下▽おもちゃ、本▽チャイルドシート、ベビーカー▽乳児用用品ーと並ぶ。
北陸は路面店が多く、一部に商業施設内のテナントもあり、そうした店は区分けの制約を受けるが、基本的に各店の造りは同じ。だから、ユーザーは普段と違う店でも、何となく目当ての商品の場所が分かる。
アパレル店には、顧客がいつも新鮮味を感じられるよう、頻繁にレイアウトを変更するケースもある。筆者もそんな店で働いたことがあるが、頻繁に棚を動かすことに疑問も感じた。棚を動かす作業時間も人件費は発生するし、スタッフは出勤する度に商品の場所を覚え直す。費用対効果から、やりすぎは得策ではないと思った。
この点、西松屋はそんな「ワクワク感」のようなものをあえて捨て、ほとんど固定されたレイアウトで常連客が必要なものを探しやすいよう、本部主導でレイアウトを決めているようだ。これならスタッフも陳列作業が簡単だし、必要以上に時間を割かれることも人員を割かれることもないだろう。
洋服はハンガーで陳列、販売
上記のように、西松屋は店舗レイアウトをほぼ固定することで陳列にかかる手間を抑えている。
これに加えて特徴的なのはハンガーによる陳列だ。スタッフはハンガーに掛かって店に届いた衣類を、そのまま棚にかけて販売し、客がそのままレジに持ってきたらそのまま袋に入れる。何と簡単なのだろう。
前述のアパレル店でのアルバイトでは、早朝から店舗レイアウトを変え、日中は客が広げた服を畳み直し、レジに持ち込まれたくしゃくしゃの服を再び畳み直した。そんなことを一日中繰り返していた。
西松屋のスタッフは服を畳んで陳列したり、畳み直したり、レジで畳んだりする手間が要らない。これなら人数が少なかろうが、経験の浅いパート従業員であろうが、戦力として店舗運営できるのだ。
株価は伸び悩むも、業績は伸長
西松屋の業績は絶好調だ。2021年2月期はコロナ禍にもかかわらず、郊外を中心とした出店戦略が奏功し、過去最高益を更新。22年2月期(今期)はさらに業績を伸ばす予測だ。
会社四季報21年夏号によると、今期は店舗の純増数が30~40店(前期は3店)の予定で、それだけでも売り上げの増加が見込める。その上、仕入れ管理を徹底することで、さらに利益率が改善する見通しという。
同社の株価は20年春ごろの600円台から一本調子に上がり続けたが、11月に1800円を超えてからは売られ続け、1300円台まで下落した。21年4月には再び1800円を上回ったが、その後、5月からは下落傾向が続き、8月6日の終値は1384円で伸び悩んでいる。
思うに、コロナ禍で最高益をたたき出したことで「コロナ銘柄」と位置付けられ、感染の収束や景気回復の兆候とともに売られたのではないか。しかし、今期も最高益の達成が見えてくれば、市場の見方も変わってくるだろう。今期は自社ECの始動に加え、HISと連携した海外販売も業績に寄与するはず。商品の品ぞろえも小学校高学年向けまで幅を拡大してきている。
PERは9倍台で決して高くはなく、業績に株価が追い付いてくるのは時間の問題ではないかとみている。