北日本紡績(白山市)は2022年5月16日、23年3月期の連結利益が5期ぶりの黒字になるとする業績予想を発表した。紡績事業が順調に回復するほか、テキスタイル事業で海外需要に底打ち感がみられるかららしいが、筆者としては「本当に?」と半信半疑に見ざるを得ない。
※筆者は北日本紡績の株式を1株も保有していないので利害関係はありません。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 | 純損益 | |
22年3月期実績 | 830(34.9) | ▲140(赤字継続) | ▲129(赤字継続) | ▲128(赤字継続) |
23年3月期予想 | 1,383(66.51) | 4(黒字転換) | 21(黒字転換) | 14(黒字転換) |
それと言うのも、同日発表された22年3月期の連結決算は4期連続の赤字だったのだが、同社は決算発表時まで、直近の黒字予想を維持していた。
この「直近の黒字予想」、実は2021年5月14日に初めて出された業績予想だ。それから1年間、同社は1度も修正しなかった。投資家からすれば、当の会社が「修正しない」というのは、裏を返せば、毎日、直近の業績予想を追認し続けた、ということに等しい。
ところが、フタを開ければ「前期比で64.9%伸びる」との予想を据え置いていた売上高は34.9%の伸びにとどまり、黒字予想だった各損益は赤字継続だった。
業績の良し悪しのことを言っているわけではない。上場企業として、その情報開示の姿勢はどうなのか、ということを問いたい。
会社側が決算発表当日になって初めて、前期の売り上げが思ったほど伸びていないこと、結果として赤字だったことを知ったはずはない。これほど大事なことを後出しで公表する配慮の無さに呆れる。
それで「今期は6割増収で黒字化の見込みです」。…あれ?1年前にも聞いたことがあるような。
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余談だが、通常、上場企業が業績を開示する書類「決算短信」では、売上高や利益の増減率を「12.3%」のように、小数点第1位までで表す。
これが慣習なのかルールなのか、筆者は知らない。
ただ、上記の表にもある通り、同社は16日、なぜか23年3月期の売上高予想の増減率を小数点第2位までで開示した。
何か深い意味があるのか、単なるミスか。いずれにせよ「そんな箇所を詳しく開示する前に、もっとちゃんと公表すべきことがあるんじゃないの?」と思ってしまう。