「高木繁雄氏は取締役に不適格」/川田テクノロジーズ総会前に異論/地方にありがちな問題とは

「高木繁雄氏は取締役に不適格」/川田テクノロジーズ総会前に異論/地方にありがちな問題とは

2022年6月18日

東証プライムの川田テクノロジーズ(南砺市)は2022年6月17日、同29日の株主総会で社外取締役の高木繁雄氏(北陸銀行特別参与)の再任を諮る議案について、議決権行使助言会社「Institutional Shareholder Services Inc.(ISS)」が否定的なレポートを発行したと発表した上で、川田テクノ自身は「問題なし」とする意見を表明した。

同社は鋼製やPC橋梁、建築鉄骨の設計、製作などを手掛けるグループ企業の持ち株会社。

同社の発表によると、ISSは高木氏が川田テクノの大株主で借入先でもある北陸銀行の特別参与であるとの理由から、社外取締役として独立性が担保できないと判断し、レポートで議案に反対するよう推奨している。

一方、川田テクノは、高木氏は北陸銀行の頭取経験者だが、2013年に頭取を退き、現在は同行に関する「事業運営や経営判断に一切係わる立場にありません」と説明している。その上で、近年の高木氏は富山商工会議所会頭や富山県商工会議所連合会長として、主に公的な立場で仕事をしていると紹介し、適任であると主張した。

2021年には「北陸電力VS新田富山県知事」で話題に

筆者の見るところ、これは地方にありがちな問題が背景にある。有り体に言うと、地域の人材が不足していて、特定の人間に権限や機能が集中してしまう状況を反映している。

新聞社時代、筆者は同じ日に異なる3件の取材(〇〇協議会総会とか、第3回〇〇検討会)に行き、全ての場所で同一人物を見掛けたことがある。多くの場合、経済界代表で召集されるのは地銀の頭取経験者や北陸電力の社長経験者らに限られ、それらの人が数えきれないほどの職を兼ねている。

2021年、北電が社長交代に当たり、社長経験者のポストとして会長、相談役、特別顧問を置くこと対し、富山県の新田八朗知事(日本海ガスの元社長)は社長経験者が社内に残り続けることに否定的な見解を示し、話題化した。

当時の北電側の説明は、こうだ。「相談役や特別顧問は現役経営者に助言する役割。また、北電の役員は地域の委員会や審議会のメンバーになる例が多い。その数は270例もあり、現役の役員だけでは足りない

さすがに270例もあるなら仕方ないとも思える。ミクロな視点では「なぜ、北電はいつまでも社長経験者を社内に置いておくんだ」と思うわけだが、マクロな視点では「なぜ、そこまで同じ人(会社)に頼らなければならないのか」という地域的な課題が浮き彫りになる。

名誉職は「一切」会社に関わらない??

ISSのレポートを振り返ると「北陸銀行の融資先の川田テクノ」と「北陸銀行特別参与 兼 川田テクノ社外取締役」の関係を問題視し、川田テクノは独立性に問題なしと主張している。

制度上は、そうだろう。

だが、行内に残る頭取経験者が「(銀行の)事業運営や経営判断に一切係わる立場にありません」という説明に、誰もが納得するだろうか。全く関わらないなら、何のためにいるんだ。「一切」は言い過ぎで、逆に違和感を生みかねない。

地銀の頭取(経験者)が上場企業の社外取締役に入る例は、枚挙に暇がないが、川田テクノ宛てのレポートは今回が初めてではなく、過去にも出されたことがある。筆者個人としては、高木氏の人格や能力どうこうではなく、外部から一度ケチがついたのだから任期切れに伴って再考すべきだったと思う。

本来なら「問題ない」と繰り返すより、誰もが問題と感じない人選が望ましいはず。それが地方で難しいのは上記の通りだが、できている会社もある。このままでは次の任期切れ時にも同じレポートが出され、会社側が反対意見を表明する繰り返しになってしまうだろう。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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