※2024年7月12日13時の時点ではロイター通信の報道を引用していましたが、同日夕方にオアシス側の資料に目を通したので記事内容を修正しました。
「物言う株主」として知られる香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」は2024年7月12日、同社が大株主となっているクスリのアオキホールディングス(HD、白山市)の青木宏憲社長と青木孝憲副社長らに対し、72億円の損害賠償を求める訴訟を提起したと発表した。
※この件に関する過去記事、続報は以下のリンクをご参照ください。
上の【続報③】にある通り、オアシスはクスリのアオキHD株を9.67%保有している。2023年の株主総会ではガバナンス改善を目指して株主提案を行ったが、否決された。
株主総会後、日本経済新聞は「クスリのアオキHD 鈍る成長、問われる対話力」という見出しの記事を掲載した。
その後もオアシスは株式を売却せずに継続保有したばかりか、2024年に入って株を買い増した。そこで、当サイトでは今年(2024年)も株主提案を行うだろうと記事化した。結果として、株主提案だけでなく訴訟まで提起されることになった。
問題視しているのはストック・オプション
オアシス側が問題視しているのは、株式の希薄化につながるストック・オプションの発行だ。「希薄化」というのを簡単に説明すると、発行株式数が増える一方で企業価値が一定ならば、1株当たりの価値が下がる(≒値下がりする)可能性があるということ。
オアシスの説明によると、クスリのアオキHDには「疑わしいストック・オプション」があり、クスリのアオキHDは行使した場合に11.1%もの希薄化に相当するストック・オプションを、公正な単価から99%以上のディスカウントとなる5,250万円程度で青木社長と青木副社長に発行した。
ストック・オプションは株価を大きく下げる結果となった業績予想の下方修正の直後に発行された。オアシス側はこれらが少数株主の利益を犠牲にして社長・副社長が行使の権利を得ることになると主張している。
さらに、オアシス側がクスリのアオキHDの社外取締役・社外監査役に面談を求めても、全て拒絶されたらしい。
そうした経緯の下、オアシスは青木社長や青木副社長、八幡亮一取締役、他の青木家の面々に対し、72億円の損害賠償を求める訴訟を提起した。また、次回の株主総会に向けては青木社長や青木副社長、八幡氏の解任を求める株主提案を提出したという。
訴訟など発覚後、アオキ株価は急騰
上記の件が公になった2024年7月12日は日経平均株価(225種)が前日から1,000円以上も下げる低調な相場環境で、クスリのアオキHDの株価も前場(≒午前)は前日終値と同じ3,000円前後で推移していた。
ところが、正午ごろに上記の件の一方が伝わると、後場(≒午後)に入ってクスリのアオキHDの株価は急騰した。一時は前日終値より5.7%(172円)高い3,149円の高値をつけた。最終的には4.6%高の3,114円で大引けを迎えた。
オアシスがさらなる強硬姿勢を見せたことで、投資家の間でクスリのアオキHDの変革に向けた期待感が高まったものとみられる。