会議所の会頭って、元銀行トップじゃなきゃダメ?/富山商工会議所は6人連続で北陸銀行出身者に!?

会議所の会頭って、元銀行トップじゃなきゃダメ?/富山商工会議所は6人連続で北陸銀行出身者に!?

2022年7月19日

2022年7月16日付の北日本新聞を見て、思わず目を疑った。

同紙は富山商工会議所の高木繁雄会頭(北陸銀行元頭取)が引退の意向を示したのに合わせて歴代会頭の一覧表を掲載しており、直近10人のうち7人が同行の元トップだった。しかも、1978年以降は5人続けて同行の元頭取。一覧表があまりに同じ肩書きばかりなので、印刷ミスかと思って何度も見返してしまった。

同日の北國新聞によると、次期会頭には同行の元会長、元頭取が有力視されているらしい。どちらかになれば、6人連続で同行出身の会頭となる。

金沢商工会議所も2006年以降、2人続けて北國銀行の頭取経験者が頭取を務めている。会議所の会頭は銀行の元トップじゃないとダメなのだろうか。

(ちなみに、北陸経済連合会は初代会長から現在の9代目会長まで全員が北陸電力の社長経験者)

「市民目線」という虚構

ここで、特定の誰かが良いとか悪いとか言うつもりは全くない。一般論として、もっと多様な候補者から、もっといろいろな議論を経て適任者を選ぶべきだろうに、自然に候補者が絞られている状況はどうなんだろう、と思うのだ。

銀行や電力会社の役員になる人が、地域で有数の優秀な人材なのは間違いない。だけど、それは銀行マンや電力マンとして秀でていたのであって、会議所の本分である「中小企業支援」に最適とは限らない。

そもそも銀行、電力、新聞、行政なんかは、地方では圧倒的な強者の立場にある。

地方紙にいた筆者の経験では、新入社員が親より年配の取材相手に生意気な口をたたき、30代で年収1,000万円に届く厚遇は、地域の実情とかけ離れている。在職時は「相次ぐ値上げ、家計を直撃」という記事を書きながら、自身は生活費を気にする必要がなかった。

いま、弱小企業の代表者になって思うのは「強者の立場から『市民目線で』見る世界」と、実際に一市民として向き合う世界には隔たりが大きいということ。前者では各種支援の必要性を実感できない面もあるのではないかと考える。

出来レースにもならない

もちろん、誰がトップに立とうが、その経済団体の勝手ではある。

ただ、公益的な団体でもあると自称するなら、トップの選考委員会では「Aさんで良いか?」という話し合いではなく「この地域の経済を盛り上げるのに最適な人物は誰か?」を広く議論すべき。その結果が銀行や電力の出身者なら、大いに結構だ

それを官庁の天下りじゃあるまいし、現職が引退するとなった瞬間、現職の会社の後輩が後釜に最有力視される状況に、違和感はないのだろうか。

というのが理想論だが、実際には狭いムラ社会で銀行、電力、新聞に正面から楯突く人はほとんどいない。かくして出来レースどころかレース自体が成立しないまま、当然のように「強者」からトップが生まれる。皮肉なことに、この固定化された構図が連綿と続く状況こそ、地域経済の閉塞感を最も色濃く反映している気がする。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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